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  050  十二支のあやとり−2  (01/25/2003)

トピックス 047 で呼びかけた 「羊」のあやとりについての情報が、海外会員から寄せられました。 Libby Patterson さん の創作、「角のある牡羊の頭 (Horned Ram´s head )」です。 顔の線がなかなか見事なできばえと思います。 みなさんには、羊を正面から見たところに見えるでしょうか。

* この画像は、下記の出版物から、著者ならびに出版社の許可を得て掲載しました。 ここに記して お礼申し上げます。

Briar O'Connor and Libby Patterson, (2002) 'He Whai, Old and New String Figures from Aotearoa New Zealand', Reed Publishing (NZ) Ltd,.

(TS)

 
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049  「 ね こ ま た 」  (01/18/2003)

 ねこまたは どれゞゝゞゝ(どれどれどれ) と 姉がとり 

この明和三年 (1766) 作の川柳は、女の子たちがあやとり遊びをしている様子を詠んでいます。

川柳の世界では、「ねこまた」 は “糸がこんがらがったさま” と解釈されています (* 1)。 また、あやとりの「ほうき」のような形になって、容易には取れないもの と考えている方もいます (* 2)。 あやとりは、不思議なもので、傍で見ているうちに引きこまれ、当人たちがもたついていると、つい出しゃばりたくなるものです。 この川柳からは、ちょっと糸の絡みが複雑になってきて、幼い妹がとまどっている; そこへ、姉が得意そうに、大人のような振舞いで横から入ってきて、取ってみせる情景が目に浮かびます。

ということなのですが、なぜ、“糸がこんがらがったさま”が 「ねこまた」 と呼ばれたのでしょうか。 それについての説明はありません。 この 「ねこまた」 の意味、そして川柳の解釈は、ほんとうに正しいのでしょうか?

寛政二年 (1790) に刊行された 『小紋雅話』 に、あやとりの 「ねこまた」 の語が見られます。 著者は有名な戯作者・絵師であった山東京伝。 この江戸小紋の意匠図案集のパロディには、当時の江戸の風俗・流行が詰め込まれています。 その図柄の一つに、二人あやとりで現れる形を並べた「阿や」があります。 添えられた説明は、“くれはとる あやは児女のもてあそびなり ねこまた つづみのどう みづ などとていろいろあり” (* 3)。 この記述からは、「ねこまた」 が、「つづみ」 や 「みず」(「かわ」の形)のような、はっきりとした一つの形であったように思えます。

1895年、Stewart Culin の作成した、当時の朝鮮半島や中国、日本など極東アジアの遊びを調査した報告書には、二人あやとりの 「あみ、たんぼ」 の形の日本での名称として、「ねこまた」 を挙げています (* 4)。 「あみ」 の形は、 『小紋雅話』 の「阿や」の図柄にも描かれています。 しかし、この 「あみ」 の形なら、簡単に取り上げることができます。 どうして幼い妹には取れないのでしょうか。

Culinの報告書では、nekomata を “飼い猫から変身したらしい山猫” と説明しています。 化け猫の 「ねこまた」 は、兼好法師の 『徒然草』 に、「奥山に、猫またといふものありて・・・(八十九段)」 との記述がある、昔から有名な妖怪です。 各地に、“死んだ人を生き返らせる老猫の化け物”、“特徴は尾が二股に分かれていること”など、さまざまな言い伝えが残されています (* 5)。

上の川柳と同時代の十八世紀後期に出版された 黄表紙絵本 『妖怪仕打評判記(ばけものしうちひょうばんき)』(恋川春町 作・画)や、『化物一代記』(伊庭可笑 作、鳥居清長 画)には、尻尾が二つに分かれた 猫股 が描かれています (* 6)。 この時期、江戸では化け猫の 「ねこまた」 がよく知られていたのでしょう。

ここで、川柳の 「ねこまた」 が、この化け猫から名づけられた 二人あやとりの一つの形(「あみ」の形)である、と仮定します。 そうであれば、この川柳は <
二人あやとりをしていてこの形(「あみ」の形)が現われたとき、周りの子どもたちが 「ねこまた、ねこまたが出た!」 と言って、はやし立てたので、幼い妹は怖くなって手を出せなくなった。 で、姉が大人びた物腰で 「どれどれ、私が取ってあげましょう」 と出てくる> 情景を詠んでいる という解釈になります。 言うまでもなく、“糸がこんがらがったさま” の意味で使われている 「ねこまた」 の用例が他にもあれば、この解釈は的外れに終ります。 川柳に詳しい方のご教示をお待ちしています。

今のところ、「ねこまた」 が 「あみ」 の形であるという明白な証拠は、Culin の報告書だけです。 ですから、他の形である可能性もあります。 “尾が二股に分かれている”というイメージを、「かえる」(「皿の上の魚」の形 ⇒ トピックス041) のパターンに見ることもできるかもしれません。 この形は、二本の糸の狭い隙間に指を入れなければ取れない手法があるので、幼い子はとまどうこともあるからです。 その場合の川柳の解釈は、これまで通りでよいことになります。

というわけで、二人あやとりの 「ねこまた」 がどのような形であるのかは謎のままです。 近年のあやとりの本には、この 「ねこまた」 という名称はないようです。 この呼び名をご存知の方がおられましたら、このサイトまで情報をお寄せ下さい。

(* 1) 前田喜代人 (1975) 「文取り」−『川柳/江戸の遊び』(国文学解釈と鑑賞 519) 佐藤要人 編、至文堂:pp.282-283

(* 2) 渡辺信一郎 (2000) 『
江戸のおしゃべり』 平凡社新書:pp.30-31

(* 3) 山東京伝 (1790) 『
小紋雅話』 (復刻本 『遊びのデザイン−小紋雅話』 解説:谷峯蔵、岩崎美術社、1984 : p.44, pp.156-157)

(* 4) Culin, S. (1895). "Korean games." (Reprint: 1958. "Games of the Orient: Korea, China, Japan." Rutland: Charles Tuttle. p.30)

(* 5) 国際日本文化研究センターのサイトにある、「
怪異・妖怪伝承データベース」のページ。

(* 6) アダム・カバット (2000) 『
大江戸化物細見』 小学館:p.45、p.102、p.104

(Ys & TS)

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048  TOYOTA の 全面広告  (01/11/2003)

元旦の新聞、TOYOTA の全面広告が目を引きました。 両手が織りなす綾取りのアップ。 右手には‘Emotion’、左手には‘Ecology’の文字があり、パターンの真中には トヨタのエコマークの 自動車イラストの輪郭が浮かび上がっています。

「もっと速く、もっと遠くへ。そんなクルマ本来の持つ、走るよろこび」;「地球環境に配慮した技術を持つクルマを手にするよろこび」; この二つの感動から、これまでになかった新しい‘クルマ’の価値が創出されるというメッセージ。 その表現として、両手の糸が複雑に絡み合い、美しい一つの形を作り上げる<あやとり>が使われています。

ところで、あやとりは ‘地球環境に配慮した’究極の遊びなのです。 必要なのは、紐一本だけ。 これまでの調査から、草・蔓や、動物の腱など 植物・動物性繊維を紐に用いていたことがわかっています。 変わったところでは、人の髪の毛を編み繋いで紐にしていました。 今日でも、毛糸や打ち紐の残りで充分に楽しむことができます。 遊んだあとも、紐は折り畳んでコンパクトにして仕舞って何も残りませんし、また何度も使えます(リサイクル!!)。

(TS)

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047  祝! ISFA 設立 25 周年 (01/01/2003)

新年おめでとうございます。 今年、「ISFA 国際あやとり協会」 は 設立 25周年を迎えます。

1972年、朝日新聞へ投書された ある小学生の母親の問いかけがきっかけとなって、『科学朝日』 があやとりのことを取り上げました:「古いあやとりと現代の数学」 (1972/7)。 この小論の筆者は、トポロジーの研究対象として、あやとりに興味を持っていた数学者 野口広です。 翌年には、氏をはじめとするあやとりの研究者によって、「あやとりの世界」 が8回連載され、日本のあやとりの歴史や、数学パズルのあやとり、そして世界の珍しいあやとりなどが紹介されました。 この連載を通じて、それまでは‘幼い子どもの遊び’と思われていたあやとりに多彩な側面のあることが、はじめて広く知られることになりました。 (⇒ 
ISFA 設立前夜のあやとり研究 )

野口広の著書(『
あやとり』 1973/12、河出書房新社) は、予想外の売上を記録。 その後も、あやとり本の出版が相次ぎ、あやとりがちょっとしたブームになり、メディアもこの話題を取り上げました:NHK-TV 「あやとりの世界」  (1974/5/3 pm7:30-8:00) → トピックス 138

このブームをきっかけに、野口広、江口雅彦、夏堀謹二郎ら、あやとり研究家・愛好者が集まり、1978年、 「日本あやとり協会」 が誕生。 その後の数年間は、定期的な研究会や、機関誌の発行、デパートでの‘あやとり展’など 活発な活動が展開されました。 しかし、“あやとりは 幼い子どもの とるにたらぬ遊び” という常識の壁を越えることはできなかったようです。 国内会員は減少を続け、本部は 1993年に カリフォルニア に移り 「国際あやとり協会」 となりました。 ですから、今年は新しい体制になって10周年ということでもあります。

西欧では、あやとりは ごく一部の愛好家以外には ほとんど知られていない遊びです。 しかし、この ISFA の普及活動を通じて、教育者やストーリー・テーラー、巡回パーフォーマンス集団の人たちが注目するようになり、各地で 手から手へと この遊びが広がってきています。

また、あやとりを ‘ <聖なる人々>からの贈り物’ と考えていたネイティブ・アメリカン・インディアンとの交流も生まれました。 これまでの証言記録や世界各地の伝承あやとりの研究を通じて、‘ひまつぶしの遊び’ となる以前の、あやとりの原初的な姿が おぼろげながらも見えてきたようです。

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発足当時、『エピステーメー』・『数学セミナー』・『数理科学』の誌上を借りて発表された わずか数ページの協会誌は、四半世紀を経て、300ページを超える 唯一の専門誌に成長しました。 現在、ISFA では協会出版物の CD-ROM 版の準備を進めています。 この CD-ROM と日本語翻訳ソフトを利用すれば、あやとりについての最新の研究・話題をより容易に知ることができるようになるでしょう。

今年も、このISFA日本語サイトでは、あやとりについての あらゆる情報を発信して、この遊びの奥深さ を伝えたいと考えています。 これからも 皆様からの情報、ご意見を取り入れてページ作りを続けていきますので よろしくお願いいたします。

さて、「未」年に因んで、‘羊’のあやとりを紹介したいのですが、手元にあるのは「山羊」・「羊の胃」だけで、そのものズバリは残念ながら見つかりませんでした。 毛糸には、あやとりの紐で、いつもお世話になっているのですが…。 ‘羊’のあやとりをご存知の方、あるいは新しく作ってみたという方は ご連絡下さい。

(TS & Ys)

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046 手から離して楽しむ あやとり  (12/21/2002)

季刊誌 "String Figure Magazine (March 2002)" に、ボリビアのあやとり
「足跡」 が掲載されています。 これは、作り上げたパターンを地面に置いて楽しむものです。 なかなか、ユーモラスなできあがりです。 大きさを変えれば、つま先立ちや走っている足跡になります。 さらには、1つだけでなく、何個も並べたりするなどのアイデアで楽しめます。

地面に置いて眺める‘あやとり’には、オーストラリアの北部、アーネムランドに住むアボリジニの<紐絵>風パターンも含まれます:木、鳥の頭、槍、卵、キャッサバ、ココナッツ、バナナ等々。 単純ながら力強く感じられるパターンです (*1)。

鳥の頭
バナナ たまご


このようにパターンを手から離して、膝や平らなところに置いて楽しむあやとりは、日本にも、伝承・創作いろいろとあります。 「納豆」(⇒ 
トピックス 032)・「おさげの女の子」「菊」 「とんぼ」…。 創作では「キリン」 (*2)、「かたつむり」「タコ」「イカ」「カニ」「足跡」などがあります (*3)。 新しい(?)試みとして、最初からループを手からはずして、ピカチューなどの人気キャラクターの輪郭をあやとりのループでなぞるようにして、作ることが紹介されています (*4)。 そのような遊び方もあるのかと思いました。

ふつうのあやとりは、手指から離すと形が崩れてしまいます。 それを物足りなく思う人は、パターンを接着剤で固めて室内に飾ったりしています。 複雑なあやとりパターンを針金のような素材で作り、オブジェとして展示しては、とも思います。

(*1) Maude, H. C. & Sherman, M. A. (1995) "The String Figures of Yirrkala - A Major Revision." Bulletin of the ISFA vol.2 : 87-187.

(*2) Masahiko Eguchi and Kazuo Kamiya (1996) "String Figure Zoo: Variations of the Inuit "Caribou."
Bulletin of the ISFA vol.3 : 56-62

(*3) Kunihiko Kasahara (1997) "Elevator, Snail, Footprint, Octopus, Cuttlefish, Crab."
Bulletin of the ISFA vol.4 : 229-231

(*4) 福田けい 監修 (2000) 『
つくろう!あそぼう! あやとり遊び 人気のTVキャラクターやいきもの』 人気のTVキャラクターやいきもの』 (婦人生活社) 

〔追 記 04/29/2007〕

こういう本を見つけました: 浅井 和昭 『あやとり』 新風舎、2006。
この本は、「あやとり」とは関係のない短編小説集です。 強いて言えば、男女のこころの綾の、ほのかなやりとりというところでしょうか。 ただ、表紙には、あやとり紐で作られた素敵な女性の顔が描かれています(装幀 竹元 良太)。 表紙は
こちら

(TS)

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045 『 伊東家の食卓 』 (12/14/2002)

日本テレビ(NTV)系の人気情報番組 『 伊東家の食卓 』(毎週火曜日午後7時から放送) には、みんなで手軽に楽しめるゲーム・パズルやマジック・トリック等を紹介するコーナーもあります。 12月10日の放送分で、あやとりトリックの紹介がありました。

それは「大発見−なぞのすり抜けロープ!?」という指ぬきトリックです。 ロープマジックとタイトルにありますが、実際は、あやとりのループを使います。 簡単そうに見えながら、ひもの持ち方、ねじり方、引っ張り方と、手順に工夫があり、指ぬきがうまくいったり、うまくいかなかったりします。 画像付きの説明が番組のサイトで紹介されています:http://www.ntv.co.jp/ito-ke/。

あやとりでは、トリックも一つの分野として収集されています。 このあやとりトピックスでも取り上げた 「セントローレンス島の結び目トリック」 (⇒ 
トピックス 013)をはじめ数多くの種類が世界各地で伝えられてきました。 以下は、季刊誌 『String Figure Magazine』 に掲載されています : 鼻ぬけトリック エジプトのトリック3種 リフ島のトリック ロックされた輪 指ぬきトリック ルーマニアの指ぬきトリック 指ぬきトリック ビルマ(現 ミャンマー)の指ぬきトリック さまようループ ラップランドのトリック ミウォクのトリック

手指に複雑に絡みついた紐糸がするりと抜け落ちた瞬間、ちょっとした快感があります。 それは、大昔から今日まで人間に共通の感覚なのでしょう。

(TS & Ys)

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044  『スカイパーフェクTV!ガイド』 の紹介記事  (11/10/2002)

『スカイパーフェクTV!ガイド 11月号(*)』(東京ニュース通信社) に 「NET INFERNO ウェブサイトナビ」 (p.406) のページがあります。 今回のテーマは「童心に帰ろう」。 執筆者の子供の頃の体験を交えながら、<懐かしい遊び>のウェブサイトが楽しく紹介されています。

昔懐かし遊びの 《あそびの大図鑑》。 子供アニメの 《キッズステーションどっとこむ》。 牛乳キャップの 《めんこ博物館》。 オモチャいろいろの 《おアソビ探偵団》。 ビー玉の 《Land of Marbles》。 これらのサイトを見ていると、「あれもやった、これも知ってる」と、ほんとうに子供の頃を思い出してしまいます。

この特集に 《ISFA》 も取り上げていただきありがとうございました。 なお、下記のサイトには、あやとりのページもあります。 あわせてご覧下さい。

《あそびの大図鑑》 : http://www.tsubamesanjo-jc.or.jp/kodomo/
《おアソビ探偵団》 : http://www.tnc.ne.jp/oasobi/

(*) 『月刊 SkyPerfectTV!』 (ぴあK.K.発行) ではありません。

(TS & Ys)

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043  「あざらし」  (11/03/2002)

今年の夏は、タマちゃん、ウタちゃんと、地元の川を遡って、愛嬌のある姿態を人目にさらした「あざらし」が人気になりました。 ここしばらく、姿を見せませんが、今はどうしているのでしょうか。 アゴヒゲアザラシ( bearded seal )の故郷は、はるかベーリング海峡や、さらに北の極寒の地方とのこと。 それが、春先、日本近海にまでやって来て、晩夏になっても戻らないでこういうことになったようです。

このような‘人気者’が現れると、折り紙の世界では、創作作品が次々と発表されます。 しかし、あやとりでは、愛好家も少なく、紐一本という表現上の制約があるので、すぐに新しいパターンが創出されることはまずありません。

そこで、伝承あやとりの「あざらし」を探してみました。 この「
アザラシ」は、小型のゴマフアザラシやゼニガタアザラシの仲間です。 カナダ極北圏コロネーション湾岸地方や、グリーンランド北西部のヨーク岬で暮らしている人々のあやとりで、取り方はかなり難しいものです。

この流線型の胴体と‘ひれ’のデザインは、“愛嬌がある”とまでは言いませんが、すっきりとした可愛い感じがあります。 これに‘ひげ’を加えると、タマちゃんの「アゴヒゲアザラシ」になるのでしょうが、そのちょっとした工夫が、折り紙のようには簡単にできないのです。

(TS)

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042 「密かな楽しみ CM制作者の裏話」  (10/26/2002)

昨年の12月に放映された資生堂のCM「スキンケアハウス資生堂・遊び編」は、この「トピックス」でも紹介しました (⇒ トピックス 021 )。 そのCM制作者の裏話が、《社団法人 全日本シーエム放送連盟(ACC)》 のウェブサイトの中にあります(*)。

CMでは、伊東美咲さんが上手に「ひとりあやとり」を取っていましたが、そこに至るまでには、CM製作者 U氏の人知れぬ苦労があったようです。 出演者だけが、あやとりを練習するのだろうと思っていましたが、そうではないのですね。

U氏にとって、あやとりは何十年ぶりかのチャレンジであったのですが、意外にも「指先は覚えているもの」で、ご自身で「美しいことは指先が憶えている」というコンセプトを実感されたようです。 ここにも、あやとりファンが新たに生まれたわけですが、“人前では決してやらないことにしている。 だって想像しただけでも、いい年したオヤジがひとり綾取りに夢中になっている図はあまりにもキモチ悪いからね。” ( 『ACCtion!』 Vol.96, 2002.4) とは、身につまされる思いです。

(*) ACCの ホーム・ページ から、キーワード検索に「綾取り」と入力してクリック。

(TS)

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041 「大きな古時計?」  (10/08/2002)

現在、平井堅が歌う「大きな古時計」が、ヒットチャートの上位にいます。 CDの売り上げも50万枚を越えたそうです。 これは、私(TS)にとっては、はるか昔、子供の頃に聞いた歌です。 懐かしい感じのする名曲ではあるのですが、この歌は、思い出したようにひっそりと聞くような歌なのに、と複雑な思いです。

ところで、1906年に刊行された最初のあやとりの専門書であるC.F.ジェーンの "String Figures and How To Make Them"(* 1)には、「ふたりあやとり」の最後の形として「時計 clock 」があります。 これが、「大きなのっぽの古時計」なのです。

イギリスやアメリカなど英語圏では、「ふたりあやとり」は “ 猫のゆりかご cat's cradle ” と呼ばれています(⇒ 
トピックス 009)。 この「時計」を紹介する前に、それぞれの形の名称を記しておきます。 最初の形の作り方は、ギリシャと同じです(⇒ トピックス 038)。 名前は「ゆりかご」。 以下、“たんぼ、あみ” は「兵士のベッド、教会の窓、魚の池」、 “川” は「ろうそく」、 “はし、ふね” は「飼い葉桶、さかさまのゆりかご」、指を下に向けた “たんぼ、あみ” は「ダイヤ、兵士のベッド」、“馬の目” は「猫の目、ダイヤ」、“かえる” は「皿の上の魚」と続きます。 ここまでの取り方は私たちの知っている方法と同じです(その取り方のわかりやすい説明が、《イー・こども・ドットコム》 のサイトにあります ⇒ 下欄)

「時計」は「皿の上の魚」から取り上げます。

はじめに、中央の2本の糸が交差しないように形を整えます (Fig.041-1)。 

そして、右手小指を、上から向こうの三角形に、続けて下から真中のスリットに入れ、スリットの向こう側の糸を引っ掛けて引き出します。 

同じようにして、左小指で、スリットの手前側の糸を引き出します (Fig.041-2)。
次に、各親指と人差指を、小指の輪に上から通し、2本の糸をその交差しているところに上から入れ、取り上げて (Fig.041-3)、小指の糸を外さないように手のひらに引き付け、糸を持っていた人からすべて移し取ります。
このような形になりました (Fig.041-4)。

『 新英和大辞典 第5版 』(研究社、1980)の cat's cradle の項にある 「clock」 のイラストも、同じように描かれています。 なぜ、この形が「時計」なのでしょうか? そう思った人は少なくないでしょう。 『 Scientific American 』 の名物コラム:「数学レクリエーション」の筆者イアン・スチュアートも同じ疑問を持ちました(『 日経サイエンス 』1998/3, pp.118-121, 「あやとり数学への挑戦」)。 

実は、ジェーン夫人の本には書いてあるのですが、このパターンは、縦長になるよう垂直にして見せるのです (Fig.041-5)。 上部に装飾があり、脚台の付いている背の高い木製の大型箱時計 ( long case clock ) のイメージなのです。 ただ、すべりのよい糸では、この形をとどめるのは難しいでしょう。 太目の毛糸のようなゴワゴワした糸を用いてください。

この形がはじめて現れた時、「新しいパターンができた!」 と、得意満面だったのでしょうか。 それとも、相手に「失敗だ ! 」と言われて、「これは“時計”だよ !! 」 と言い張る負け惜しみから生まれたのでしょうか。

二人あやとりは、気の合う者同士が上手に続けると、夢中になって、いつまでもきりがありません。 この「時計」を作って、“あやとり遊びは、これでもうおしまい(の時間だ)” と言っていたのかもしれません。 実際、このパターンからは、続けて取ることはできません。 

この「時計」は、ジェーンの父親が子供の頃に遊んでいた終わり方で、ほかの文献には見当たりません。 その Horace Howard Furness は、1833年に生まれ、後にシェイクスピア研究の大家となった人です(* 2)。 ペンシルバニア大学のウェブサイトには、書斎で読書する彼の写真が掲載されています (* 3)。 彼の幼少期は1830年代、一方、Henry Clay Work がアメリカ民謡 "Grandfather's Clock" を発表したのは1878年。 ですから、このあやとりの「時計」は、歌の「古時計」よりも、さらに 40年以上の歴史があることになります。

(* 1) Jayne, C.F. (1962) "String figures and how to make them. New York: Dover. - A reprint of the 1906 edition entitled String Figures, published by Charles Scribner's Sons, New York.
(* 2) Michael D. Meredith. (1997) "Caroline Furness Jayne (1873-1909)".
Bulletin of the ISFA Vol. 4, pp.1 - 7.
(* 3) ペンシルベニア大学図書館 "
Horace Howard Furness 記念文庫" のページ。    

(TS & Ys)


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Last updated  04/29/2007