Last updated: 2020/12/19

トリック

ここでは、トリックや動きのあるあやとりを紹介しています。

「見てね!」

ニューカレドニア島

1914年ニューカレドニア島の現地女性から収集。一連の流れるような取り方でパターンをパッと見せてはすぐに消す、そのくり返しで見ている人の目をくらませる面白いあやとりです。出来上がりの形よりもくり返しそのものを見せるトリックの一種と言えましょう。

では、このパターンそのものは何に見えるでしょうか?伝承者は “Nen (Look!)” と言っただけで、それ以上の説明をしていません。SFM (あやとりマガジン) の S編集長は、“Look!” という名称から「流し目」を連想しています。また、“アクション映画好きの人には「マシンガン」に見えるかも” とも述べています。見る人それぞれに見立てを楽しんで下さい。

取り方の詳しいイラスト説明は "String Figure Magazine" Volume 6, number 1 (March 2001) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

初出 Compton, R.H. (1919) "String figures from New Caledonia and the Loyalty Islands" Journal of the Royal Anthropological Institute 49:204-36.
Ys 2005/06/20

取り方: 見て!

「ねずみ」ほか

世界各地

「指切り」

日本

この指抜きトリックは、北・南アメリカ大陸先住民の他、アフリカ、極北圏、オセアニア、そしてアジアではインド、中国など、世界各地でもっともよく知られているあやとりです。多くの地方では、特定の呼び名はなく、「指抜き・指切り」と呼ばれています。一方、このトリックの〈目の前にあるものがスルスルッと消える動き〉から連想される呼び名をつけたり、面白いお話を語りながら楽しんでいる人たちもいます。ハワイでは「ウナギ」(Dickey);ソロモン諸島では「ムカデ」(Maude)。インド・アッサム地方では「一斉に飛び立つ鳥の群れ」。ドイツの子どもたちは「汽車」(トンネルの中へ入っていく汽車) (Abraham 1987)。

オーストラリア大陸とニューギニア島を隔てるトレス海峡諸島のマレ島では「ネズミ」。出来上がりから、左親指の輪をはずす (上イラスト)。この形を、すきまから聞き耳を立てているネズミと見立てます。もう一人が「ネコ」となって、このネズミをつかまようとすると、作り手は「きぃーッ」と鳴きながら、垂れている輪の手のひら側の糸 (A) を一気に引き抜きます。ネズミは素早く逃げてしまいます (Haddon, A.C. 1912)。

このように、左親指の輪をはずした後、手のひら側の垂れている糸 (A) を引けば、巻きついた糸はスルスルと解けます。しかし、手の甲側の糸 (B) を引くと巻きついた糸はさらにきつく締まってしまうのです。このことを知っていた人たちは、その面白さを取り入れたお話を語り伝えていました。

1900年代、アフリカ、ナイジェリアのヨルバの人々から採集されたお話:

ヤムイモ畑に泥棒が忍び込みます。中は、畑の所有者がたいへん用心深い人であることを知っていたので、あらかじめ引き抜いたヤムイモを束にして縛っておきます〈親指以外の4本の指が縛られたヤムイモの束〉。〈左親指の輪をはずす〉。畑の持ち主〈はずした輪〉が現れます。〈手の甲側から垂れている糸 (B) を引く。指に巻きついている糸はきつく締まっている〉。持ち主は、ヤムイモがしっかりと根を張っていると安心して帰ります。それを見た泥棒は、〈手のひら側から垂れている糸 (A) を引き抜く〉ヤムイモの束とともにあっという間に消え去ります。 (Parkinson 1906, Abraham, A.J. 1987)

インド東部のミゾラム地方ルシャイからは、モウリ (あらゆることを知っている半神半人的な伝説上の存在) が登場するお話が1943年に採集されています (Abraham 1999)。また、南太平洋ローヤルティ諸島リフ島では、1910年代、おとぎ話の人気キャラクターである ‘力持ちの愚か者と見かけはさえない知恵者’ コンビのお話として語られていました (Compton)。

出典文献の詳細は こちら


さいとうたま あやとりコレクション》 日本各地でもよく知られています。さいとうさんは「80、90才になって、他のアヤトリは一つも知らないという人たちでも、不思議とこれだけはやってくれるのである」と述べています。「指切り・指ぬき」だけでなく「そろばん抜き」(京都)、「シュッシュッポッポ」(長崎)、「不動の金縛り」(東京) という呼び名も記録されています。

取り方 (動画・音声):院内課外活動教材ライブラリー

Ys 2008/01/01

取り方: ねずみ

「海賊の財宝」

by John Baross

両手に掛かる糸は、大洋の海面。左手親指から垂れ下がる輪の先が財宝の詰まった箱。右手をゆっくり右へ引けば、宝物の箱が海底から引き上げられてくる。6才の男の子 (在カリフォルニア) の作。

取り方は "String Figure Magazine" Volume 3, number 2 (June 1998) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

Ys 2003/11/01