Last updated: 2020/12/19

あやとり遊びの名称

今日、このサイトで紹介している〈糸遊び〉は全国共通に「あやとり」と呼ばれています。しかし、それはこの10~20年ほどのことで、それ以前は、それぞれの地域の言葉で、さまざまな呼び方がされていました。

1970年代から全国各地で聞き取り調査を続けた斉藤たまさん (⇒ さいとうたま あやとりコレクション) は、これまでに約90種 (方言による些細な発音の相違を含む) の名称を記録しています。代表的な名称は、東日本に広く分布する「あやとり」、西日本での「いととり」ですが、ほかにも「ひもとり、かなとり、たすきどり、はやおどり、あぜとり、かけとり、ちどり、かがりとり、あみとり、てかけ、てとり、てなわ、てがらこ、らんかんとり、ときこ、ぎやぎや、てぃんとんが」などがあります (福音館書店本『あやとりいととり 1』の裏表紙に記載)。

「あやとり」の「あや」とは、糸が “(Xのように) 斜めに交差した形” を意味します。「ふたりあやとり」では、糸の交差しているところで、その糸を取り上げることがよくあります。おそらく、そこから名付けられたと斉藤さんは考えています。上の名称にある「たすき、あぜ、かけ、ちどり、かがり、てがらこ」も “斜めに交差した形” を意味します。たとえば、山口県錦町では「ちどり」と呼ばれていましたが、明治30年代生まれの女性は「ふたりあやとり」で相手に取り方を指示する時に「こうチドリんとことって」と言って教えていたそうです。

語源を解明することはたいへん難しいことであり、また語源が一つであるとは限りません。しかし、豊富なデータに基づく斉藤さん自身による約90種の名称の分類と語源の考察 (ISFA英文会報2004に収録) は、現在では、最も説得力のあるものと言えましょう。

Ys 2007/07/22

このページでは、各地の名称を集めています。“私たちは、「あやとり」のことを「○○○」と呼んでいた”、“「あやとり」のお国言葉が「……」のページに掲載されている” など、「あやとり」の名称に関わる情報をお寄せ下さい。皆様の協力を得て、データを充実させていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

名称地域出典 (文献・ウェブサイト・個人情報)
ウカウク (名詞:あやとり、動詞:綾取りする)
ウコカウク (動詞:綾取りをする)
北海道〔アイヌ語〕 萱野茂 (1996)『萱野茂のアイヌ語辞典』三省堂
あやこあそび 青森: 都母の国
あやことり 青森:八戸市、上北郡下田 都母の国 ⇒ 「南部弁*遊び (子供) 言葉」
たしことり 岩手:釜石市 都母の国
たすこどり 岩手:遠野市附馬牛 都母の国
とっこ 岩手:宮古市 都母の国
とりっこ 岩手:宮古市 都母の国
あや 東京〔江戸期〕 山東京伝 (1790)『小紋雅話
あやとり 東京〔江戸期〕 喜多川守貞 (ca. 1853)『守貞謾稿 (近世風俗志)
ちどり 愛知:(旧) 祖父江町 稲沢市立長岡小学校 (拾町野昔の子の遊び)
ちどり 岐阜:岐阜市 女性 (昭和10年生)
とりこ 三重:浜島町 浜島方言大辞典
ちどり 石川:加賀市 男性 (昭和7年生)
いととり (いとどり) 京都〔江戸期〕 喜多川守貞 (ca. 1853)『守貞謾稿 (近世風俗志)』
いととり 大阪〔江戸期〕 井原西鶴 (1682)『好色一代男』
いとどり 大阪〔江戸期〕 井原西鶴 (1684)『好色ニ代男』
いととり (いとどり) 大阪〔江戸期〕 喜多川守貞 (ca. 1853)『守貞謾稿 (近世風俗志)』
いととり 徳島 鎌谷嘉喜 編著 (1986)『子供の遊びとわらべ唄〈阿波童戯・童謡集〉』原田印刷出版
いとんどり 島根:仁多郡仁多 出雲弁の泉 ⇒ 「出雲弁辞書」
えととり 島根:八束郡八雲 出雲弁の泉 ⇒ 「出雲弁辞書」
いととき 熊本:玉名地方 使える熊本弁講座2 ⇒ 使えない熊本弁
アヤートゥエイ 沖縄:国頭郡今帰仁 沖縄言語研究センター ⇒ 「今帰仁方言 音声データベース」
あヂー トゥン (動詞:綾取りをする) 沖縄・国頭郡今帰仁 沖縄言語研究センター ⇒ 「今帰仁方言 音声データベース」
ムてィー トゥン (動詞:綾取りをする) 沖縄・国頭郡今帰仁 沖縄言語研究センター ⇒ 「今帰仁方言 音声データベース」
Ys 2008/12/12