Last updated: 2022/05/22

あやとりトピックス 211-220

亀岡のあやとり像 2022/04/24

京都亀岡市にあるあやとり像を見てきました。 この像は「和らぎの道」の南側の入り口付近にあります。 岩本幹雄氏の作となっています。像にはあやとり糸が何本かかけられていました。皆さんに愛されているようですね。 せっかくなので、新しい糸をかけてきました。

k16@ISFA

創作あやとり第1位 2022/02/05

第29回あやとり講習会・検定の参加者から、以下のメールを頂きました:

先日、喜ばしい事があったのでご連絡させて頂きました。

息子の聡志(小1)ですが、地元紙の新聞のデジタル版で、初日の出の写真の応募がありました。多くは、景色の初日の出の写真を出していますが、聡志はオリジナルで作ったあやとりの、「初日の出」の作品を応募し、それらをランキングする企画がありました。

なんと、ランキングで1位に選ばれました。

紙面には載りませんが、地元紙の神奈川新聞様より、特別にオリジナルの用紙を作って頂き送ってくださいましたので、添付させて頂きます。

今では、ますます「あやとり」にハマリ、図書館でも色んな文献を読んで勉強したり、上級のあやとりも出来るものがかなり増えてきました。

コロナ禍で色々と制限されていますが、紐1つで楽しめる世界を楽しませて貰っています。

大坂旬子

素敵なエピソードを共有させて頂きありがとうございました。

加藤直樹@ISFA

〔追記〕2022/05/22

「初日の出」の取り方を創作あやとりのページに追加しました。⇒ こちら

江口雅彦氏から藤村幸三郎氏へのハガキ 2021/12/25

神戸大学のAさんが、大学の図書館から高木貞治の『数学小景』を借り出したところ、本の間からハガキが落ちてきました。 そのハガキは江口雅彦氏が藤村幸三郎氏に送ったもので、昭和20年1月3日の消印がありました。

江口氏は野口廣氏らと共に日本あやとり協会を立ち上げた方で、亡くなるまでパズル懇話会員としてパズル界でも活躍されておられました。戦時中に「数楽」という語を創案して広めたり、無限に開く立方体の考案者としても有名です。藤村氏は古くからパズルの第一人者として活躍されていた方です。

ハガキが挟んであった『数学小景』は、江口氏が藤村氏に贈ったもので、藤村氏の没後に神戸大学教育学部教員でもあった田村三郎氏を通じて神戸大学図書館に寄贈された500冊ほどの蔵書の中の一冊だということがわかります。 ハガキが昭和20年のものということと、その内容がたいへん興味深く、パズル界にとっても、あやとり界にとっても貴重なものであると考えられるので、ここにそれを紹介します。(ハガキを周知する許諾は発見者のAさんから得ています。同内容はパズル懇話会でも発表します)

国会図書館のデータベースでは、『数学小景』は1947年出版になっていますが、戦時下の1943年には出版されているようです。江口氏は当時苦心して入手したのでしょう。 ここにある Ballの「あやとり」とは、『String Figures (An Amusement for Everybody), W. W. Rouse Ball, 1929』のことだと思われます。「遊戯の書物」が何を指すのかは定かではありません。また、「光」というのはたばこの銘柄です。

なお、このハガキは『数学小景』の裏表紙の内側に貼りつけた封筒に入れて一緒に保管しておくそうです。

k16@ISFA

NHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバティ」でのあやとり・ラジオでのあやとり解説 2021/12/17

12/8(水)のNHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバティ」の第28話にて、あやとりのシーンがありました。

主人公の安子(上白石萌音)は、厳しい戦争の時期を乗り越え、父たちが引き継いできた和菓子屋「たちばな」のおはぎを作り、親友のきぬ(小野花梨)のお店で売らせてもらえることになりました。おはぎをたくさん売ろうとリヤカーを借り、おはぎを売りながら商店街を歩いていると、ジャズ喫茶のマスター・定一(世良公則)と再開します。その頃、お留守番をしている娘のるいは、夫の稔(松村北斗)の母・美都里(YOU)と家で二人あやとり(「田んぼ」から「川」への形)をして遊んでいます。

ドラマでこのようにあやとりのシーンが出てきたことを受けて、NHKラジオ「ラジオで!カムカムエヴリバティ」(月~水 午前10:30~10:45)の12/8放送の「英語で言ってみよう!」のコーナーでは、あやとりを英語で解説しています。
英語であやとりを何というか?ラジオでは「Cat’s Cradle」と紹介しています。この「Cat’s Cradle」の語源については、トピック009で触れています。
ラジオでは続けて「まず一本の紐を輪にします。両手の指に巻き付けて様々な形を作ります。例えばほうきや梯子、星などがあります。」の文章を英語で解説しています。

このラジオの内容は、NHKのWebページやラジオアプリ「らじるらじる」の「英語でカムカムエブリバティ(18)」にて、12/20(月)午前10時まで再放送されています。

吉田仁子 & 加藤直樹@ISFA

第29回野口廣記念あやとり講習会・検定報告 2021/11/27

コロナ禍でしばらく中止になっていたあやとり講習会・検定が、2021年11月6日(土)に、紅葉の美しい東京代々木のオリンピックセンターで約1年半ぶりに再開されました。
オリンピックセンターの指示に従って、検温、マスクの着用、消毒薬、窓を開ける等のコロナの感染予防対策も厳重に行われた中での開催でした。
講習会は例年通り、最初に小学生以下のお子さん達の発表会から始まります。
全国から集まった小学生たちが、大人たちの前で次々とご自慢のあやとりを披露してくれました。「パンパンほうき」や「七つのダイヤ」などの他に「天の川」や「メビウスの輪」など難易度の高いあやとりも小学生によって披露され、その成長ぶりに驚かされました。

発表会の後は、まず国際あやとり協会の指導員が、テキストを基にその日に指導するあやとりの実演があり、その後各自が初級、中級、上級のクラスに分かれてあやとりに挑戦します。
初級の指導は、元幼稚園であやとりを教えておられ、2006年の初回から15年間ずっと初級を担当して下さっている青木萬里子先生です。今回初級では「草ぶきの小屋」「バトカ峡谷」「ほうき→竹藪の中の一軒家→はさみ」「鳥の巣」などが取り上げられました。

初級あやとりの紹介
初級クラス

中級の指導は、府中あやとり教室でのべ1000人以上のお子さん達にあやとりを教えておられる服部知明先生です。中級では「ライアの花」「2匹の子鹿」などが取り上げられました。

中級クラス

上級の指導は、国際あやとり協会の前身「日本あやとり協会」時代に大人に混じって中学生で参加し、NHKテレビの1時間番組で世界のあやとりを紹介する等、世界のあやとりに精通しておられる杉林武典先生です。上級では参加者のリクエストにより「耳の大きな犬」などが取り上げられました。

上級あやとり「耳の大きな犬」
上級クラス

そのほかに今回は特別クラスとして、パターンあやとりの研究者長谷川浩氏の創作あやとりの紹介もあり、国際あやとり協会会員の吉田仁子さんご自身の創作あやとり「ともさん」を披露されるというハプニングもありました。

創作あやとり「ともさん」

講習会の参加者の多くは小学生で、しかも男のお子さんが目立ちました。親子で参加された方も少なくありません。
今回は神戸から一人で新幹線に乗って参加され、東京のおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に参加された小学1年生のA君が、あやとり検定で沢山の合格証を手にして笑顔で神戸に帰られました。
愛知県の豊橋からも親子で参加された方がおられますし、生徒たちにあやとりを教えたいとのご希望で有名私立小学校の先生の参加などもありました。

講習会では最初は難しくて試行錯誤しながらも、両手の中にパッと完成形が浮かび上がった時の感動は、思わず「わー!」「できたー!」とあちこちで歓声があがります。
こうして午後1時半から3時までの講習会は、何時もながらあやとりをとり合う参加者の皆さんの和気あいあいとした和やかな楽しい雰囲気が、窓辺の暖かな日差しと共に部屋中に満ちあふれていました。


【あやとり検定】

あやとり検定はあやとり講習会終了後の午後3時半から同会場で実施しています。
年々受験者の技術はアップしていて、初期の頃はほとんどの方が初級か中級を受験されていましたが、最近は上級の受験者が増えています。

検定風景(1)
検定風景(2)

小さなお子さんが難易度の高いものを選んで見事にとられているのを見ると、お子さん達の間でもあやとりの素晴らしさがどんどん認められてきていることが分かり、嬉しい限りです。
今は理系の大学生になられた或るお子さんが「あやとりをしていたら数学が好きになりました」との感想を寄せてくれたことがあります。

「あやとりは最初は簡単なものから覚えていき、少しづつ難しいものに挑戦していくうちに、終にはかなり難易度の高いものまでとれるようになります。それで、「算数の計算問題を解く時と同じような脳の働きをする」と聞いています。
あやとりが脳活性に効果があると言われていますが、楽しみながら脳活性が出来るのは嬉しいですね。

あやとり検定にも、初級、中級、上級の3つのクラスがあり、初級では3種類、中級では2種類、上級では1種類のあやとりを完全にとれたら合格証が1枚贈られます。
1日に5回まで受験することが出来ます。
合格証を5枚(初級1枚、中級3枚、上級1枚)を集めると、「あやとり指導員認定書」が贈られる仕組みになっています。

たいていのお子さんはこの「あやとり指導員認定書」の取得を目指して頑張りますが、更に難易度の高いものをマスターしたい人のために「あやとり教室指導員認定書」が設けられています。
これを取得するには、合格証10枚(初級2枚、中級3枚、上級5枚)の他に筆記試験やアンケートの提出と実技試験があります。
「あやとり教室指導員認定書」を取得した人は自分であやとり教室を開設できる他、各種あやとりイベントでの指導や、時には本のモデルやテレビ出演などをお願いする事もあります。
但し、今はコロナ禍の時代なので、予定していたあやとり検定自体が実施できるかどうかは未定です。
皆さんとご一緒にこの奥深い世界のあやとりの素晴らしさを楽しめるよう、安心安全な世の中がいつまでも続く事を心から願っています。

野口廣記念あやとり講習会・検定 世話人 野口とも@ISFA & 写真:青木幸久@ISFA 2021年11月

生命詩文集「織姫 千手のあやとり」 2021/11/20

村瀬 学氏(同志社女子大学名誉教授 児童文化研究者・心理学者)が、生命詩文集「織姫 千手のあやとり」を今年8月下旬に発行致しました。

村瀬氏のホームページにて、この詩文集と栞の内容が無料で公開されています。

栞には詩文集をお書きになった動機が記載されており、その栞をもとに、この詩文集とあやとりとの関係についてここに記したいと思います。

村瀬氏は若かりし頃、野口廣氏が研究されていた数学の一分野であるトポロジーの本を好奇心で読んでいたことがきっかけで、村瀬氏の学問領域である児童文化に関わる子ども遊びの一つ「あやとり」に、当時国際あやとり協会の会長や顧問であった野口廣氏が触れていることに村瀬氏が関心を持ち続けていた、と栞に書かれております。

また村瀬氏は、誰がなぜ「結んで」「わ」にしたものかということまでは追求せず「切ったり貼ったり」しないことが前提のトポロジーとは別の観点、つまり誰かが切ったり貼ったりしながら、それでも「一本のわ」になるようにつなぎとめている「あやとり」のことに関心を持つようになったそうです。

そして、その「一本のわ」を結んだり解いたりする「誰か」のことをきちんと考えるためには、「誰かの手」を考えなくてはならないこともわかってゆき、それが「生命」を「あやとり」として考えることの発想につながり、詩文集の重要な言葉として選ばれていったとのことです。

この詩文集の核心について触れられた内容を栞から引用しますと、

この詩文集の核心の部分は、ものすごくシンプルなところにあって、それは「根は花を、花は根を、知っている」(「根は葉を、葉は根を」でもいいのです)という、農家の人ならだれもが知っていることを「詩」のベースに据えるというものでした。(中略)その「根は花を、花は根を」の考えは、この詩文集の中では、「わ(環)」として主題化されて使われています。主題化されて、というのは、おかしな言い方ですが、要は、一つ一つの「詩」が、他の「詩」と呼応し合っているように書かれているという意味ですし、一部分の詩が、詩全体とも呼応し合っているという意味でもあります。

とありますように、例えばあやとりに関する詩のところですと、『「手」について』『「あや」について』『「あやとり」について』『一筆がき』と題した詩が並びそれぞれの詩が関わっていて、他にも「あやとり」という言葉が他の詩にも現れております。

詩『「あやとり」について』(詩文集より引用)

わたしは「あやとり」について考える。
出会いがあやを生み。あやが出会いを生み。
あやをとる「手」と「森羅万象」のあや化。その「万象」の「あやとり」の「わ」について。

「あやとり」の「はしご」。片手を放すと、ただの「ひとつのわ」に。
ほうき、家、田んぼ、川、山、舟、星、太陽、海、潮、クマ、犬、ウサギ、ヘビ、カニ、クジラ......。つぎつぎと「かたち」を変える「あや」。
すべての「万象」が「ひとつのわ」からはじまり、「わのわ」へ。そして「ひとつのわ」にもどり。
その「万象のあや」を、千と万と兆の手が、とる。
たった「ひとつのわ」が姿を変え。その「あや」をとる不思議な「手」たち。

ワラウ・インディアンの「あやとり」の複雑な「あや」。「蜂蜜」「爪のあるエイ」「キワタの木」。ワラウのひとたちは、この「キワタの木」でカヌーを造る。
(レヴィ=ストロース『蜜から灰へ』は、この「あやとり」を挿絵付きで記録している

まるで「わらしべ長者」。親から、たった「一本のわら」しかもらえなかった男の子。わらを木の葉と、木の葉を味噌と、味噌と刀を取り替え、豊かになる。
「一本のわら」がどこまでも「かたち」を変える話。進化論であるような、ないような。でもそれは「あやとり」の話。「一筆がき」、の話。

この詩文集には百篇以上もの詩が掲載されていますが、それらの詩全体がまるで「生命のわ」のように、それぞれが他の詩とも関わっているさまを、上記で触れた「生命」を「あやとり」として考えることになぞらえておられます。

そうした生命のわ、ひいては世界が「あや」や「あやとり」でできているとしたら、その「あや」を支える「て」や「糸」のことを考えざるを得なくなり、そこを考えてゆけば、とうぜん「織姫」の物語に触れなくてはならなくなる、とも村瀬氏は述べられております。

この詩文集のタイトルにある「織姫」や「千手」(仏教固有の千手観音からの着想)といった物語や宗教的な世界は、そうした分野を対象にすることが古代からの「詩」の役割としてあったと村瀬氏は考えておられ、このようにさまざまな側面から読み解くことができることも、この詩文集の面白いところであります。

この詩文集は京都の元・三月書房の宍戸立夫氏からのご紹介で拝読致しました。この場をお借りしまして宍戸氏、村瀬氏に御礼申し上げます。

加藤直樹@ISFA

オーセージ展開 2021/11/11

先日「オーセージ展開」という耳慣れないあやとり用語を聞きました。文献で使われているのはあまり見たことがありません。調べてみると、あるあやとりのWebサイトで使われている言葉だと知りました。

さて、「オーセージ (Osage)」というのは、オクラホマあたりの北米先住民オーセージ族のことです。あやとり本の古典 C. F. Jayne氏の「String Figures and How to Make Them」に「Osage Diamonds」というあやとりが紹介されています。Jayne氏は、このあやとりを1904年のセントルイス万博で、オーセージ族の男性に見せてもらいました。彼はあやとりの名前を付けていなかったので、このような命名をしたようです。

あやとりを Jayne氏に教えたオーセージ族の Charles Michelle氏
cited from "String Figures and How to Make Them"

このあやとりは、実は皆さんご存知の「四段ばしご」です。「四段ばしご」は、数多あるあやとりの中で、もっともポピュラーで世界中で取られているものでしょう。しかし、このあやとりを「Osage Diamonds」と呼んでいるのは Jayne氏だけのようです。「オーセージ展開 (Osage Extension)」は、はしごの最後の展開操作、中指または人差指を三角の中に入れてくるっと回す操作のことを指しています。

あやとりの最後の仕上げの共通した操作には「カロリン展開」などの名前が付いていることがよくありますが、非常によく知られたはしごの最後の操作には、一般的な名前は付いていません。「オーセージ展開」というのはなかなかよい命名だな、と思いました。しかし、「オーセージ」そのものがあやとりの中で一般的とは言えないので、この用語が一般的なのかどうか、Mark Sherman さんに問い合わせたところ、一般的ではないという答えでした。

はしごの研究は昔から多くの方が行なっているのに、共通用語がないのも不思議なことです。BISFA のいくつかに「はしご展開 (HASHIGO Extension)」のような用語が登場しています。用語としては「はしご展開」の方が適切なようです。「はしご展開」が一般的になるとよいのではないかな、と思っています。

k16@ISFA

〔追記〕

BISFA-7 "String Games of the Navajo" に "Osage Ending" が、『あやとり入門』で「はしご展開」が使われています。

「パターンあやとり」はあやとり革命 2021/10/06

私は今、パターンあやとりに夢中です。国際あやとり協会(ISFA)のホームページ(HP)に長谷川浩氏の「パターンあやとり」のサイトが紹介されたのがきっかけです。しかし、これに気付いている人があまりに少ないので、ここに紹介したいと思います。

「パターンあやとり」とは主に、個々のあやとりを、開始処理、装飾処理、継続処理、終了処理などのパターンと考え、それらを組み合わせることで、数えきれない創作あやとりができることを指します。これとあれをこうやったら、どうなるか?ワクワクドキドキの世界です。それはもうあやとり革命だと私は思います。

また、あやとりの収集の時代から、先人の恩恵を受けて今まさに、応用の時代に入った、と言えるのではないでしょうか。

その昔ナウルの人々は、毎年「あやとり大会」を開いていたそうです。おそらくそこでは、このようなアイディアを出し合って楽しんでいたのではないでしょうか。百年ほどを経て、やっと文明人がナウルの人々に追いついたと思うのです。これはあくまで私見ですが。

また、この考え方はあやとりに限ったことではないと思います。「固定概念にとらわれず、小さな発想の転換が大きな発展を生む。」と言えるのです。

例えば「パターンあやとり」の発想に出会うまでは、「7つのダイヤモンド」が終了処理になるなど、思いもよらなかったのです。

下の写真は、ビヤトエイディオヴィナゴですが、もう一つ下の写真はエオンガッバオの終了処理の代わりに7つのダイヤモンドで終了処理した物です。

7つのダイヤモンドの他に、複数の終了処理がありますが、それは是非「パターンあやとり」を見てください。

「あそびをせんとや」では長谷川氏が、毎日新しいあやとりを発表しています。もう何百種類にもなっています。

下の写真は、そのパターンあやとりの作者長谷川氏のサイト「あそびをせんとや」に私の作品として載せていただいたものです。私の唯一の創作あやとりです。

ともさん by 吉田
1.吉田の構え
2.焼け焦げた葉のククイ

このあやとりの名前「ともさん」は、ISFAの生みの母である野口ともさんをリスペクトしたものです。「ともさん」のとり方を説明します。

  1. 吉田の構え。(長谷川氏命名)
    5本指の構えから、人差し指の輪を親指に移し、薬指の輪を小指に移す。このことで小指と親指が二重になる。中指の輪を人差し指に移すと、人差し指の構えとみなせるものになる。
  2. 焼け焦げた葉のククイ
    1. すべての指の輪を向こうへ1回転ひねる。
    2. 親指を上から人差指の輪の中に入れ、小指手前の紐をとる。
    3. 小指を下から人差指の輪の中に入れ、親指向こうの紐をとる。
    4. 人差し指の紐を外す。

ただし、このパターンあやとりにはいくつかの条件があります。 あやとりの紐は、ものにもよりますが、普通2.5~3m必要です。ちなみに上記の「ともさん」は長さ3m、太さ2ミリです。

あやとりの技術はどうでしょうか。「ともさん」は初級くらいでもとれると思います。しかし、沢山あやとりを知っていた方が、当然パターンの数も豊富になりますから、中級以上、上級者がより多くを楽しめるだろうと思います。

あやとりの用語やとり方を知るには、石野さんのサイト「あやとりしてみよう」(ISFAのHPに紹介されている)が便利です。

そう難しいことではありません。これらをクリアすれば、だれでも創作あやとりができます。そしてこの「パターンあやとり」はまだ発展途上、現在進行形で、目が離せません。歴史的なこのあやとり革命をご一緒に体感しませんか?

是非、「パターンあやとり」と「あそびをせんとや」を覗いてみてください。

吉田仁子@ISFA

ODA紹介動画 2021/04/28

政府開発援助 (ODA) に対する理解促進を図るための広報動画の作成のため、そのモチーフとしてあやとりを取り上げたいとの依頼が昨年末にございました。

あやとりは日本だけでなく世界の様々な地域で行われており、あやとりをモチーフとすることで「日本と世界とのつながり・結びつき」というイメージを視覚的に伝えることができるなど、ODA の海外での社会貢献のモチーフとして活動趣旨に合ったあやとり作品の選定が行われました。

先方とのやり取りや作品候補の提供・選定には当協会会員の杉林武典氏が関わり、撮影当日は当協会会員の服部知明氏の指導のもと、紐の色や太さ、影の映り具合など細部に拘って念入りに撮影が行われました。また日本人と海外の方がモデルとなることで、日本と海外との関係性が演出されています。

あやとりが世界に存在することと日本の海外貢献がマッチしていて満足する出来上がりになっています。動画の視聴は外務省ホームページの「ODA紹介動画」のリンクからご覧になれます。⇒ こちら

加藤直樹@ISFA

BISFA Vol.27「あやとり記号表記法および展開図法」の寄稿 2021/03/31

国際あやとり協会が毎年発行している協会年会誌「Bulletin of the International String Figure Association: BISFA」の Volume 27 (2020) の電子版が今年3月下旬に公開されました。その Research Reports の章にて、あやとり愛好家の石田保士 (いしだやすし: 1898-1975) 氏が遺したあやとり研究資料についての調査内容を寄稿しました。

主な内容は、奇抜で面白い図法である「あやとり展開図法」や、未公開だった「あやとり記号表記法」についてです。 展開図法は、あやとり作品の紐を輪っかに広げ、作品時に交点で交わっていた所同士を直線で結ぶことで幾何学的な形となる方法です。 この図法は国際あやとり協会としては新たな情報でしたが、1938年発行の科学雑誌に投稿されていたことが今回の調査で判明しました。 見た目が美しくもあり、更なる理論的な解析への可能性を思わせる興味深い発想です。

また記号表記法は、紐の取り方を記号で表すことで、それまで文章で説明されていた取り方よりも簡易・簡潔に示せるとのことで考案された方法です。 ほぼ同時期に同様の記号表記法を考案していたのは、他に Erich von Hornbostel ぐらいであり(その方法も公開されたのは BISFA Volume 4 (1997) が初)、石田氏の発案がいかに画期的であったかが窺えます。

他にも石田氏は、ケンブリッジ大学で人類学の講師をされていたハッドン教授 (Dr. Alfred C. Haddon) と1932年には既に文通していたことが石田氏の残された資料から確認でき、その後もハッドン教授の次女 (Kathleen Haddon) など著名なあやとり研究者との文通を通じて、海外の多くのあやとり文献を収集し、少なくとも1920年代からあやとりの研究に携わっていたことが資料から明らかになっています。

戦前にこのようなあやとりの研究をしていた日本人がいて、その内容もさることながら当時の記録が残っていたことが今回の大きな発見であり、情報提供にご協力下さった Mark Sherman 氏及び石田氏のご令孫には厚く御礼申し上げます。

石田氏の研究内容の詳細は、電子版が協会会員専用ページで見ることができ、そこでは日本語版へのリンクもございます。また冊子の形での協会誌(英語のみ)は非会員の方でも入手できます。⇒ こちら

加藤直樹@ISFA