「タマレレチのカヌー」
トピックス 036に「〈あの世〉のあやとり」というニュージーランドのマオリのあやとりについての記事があります。「タマレレチのカヌー(*1)(*2)」は、そこで紹介されている「冥界」の最初に取られるあやとりです。ここでは、「タマレレチのカヌー」について紹介します。
タマレレチ(Tama Rereti)は、天の川を作り、空にたくさんの星をばらまいたとされる伝説の戦士です。(*3)
昔々、夜空には星がひとつも輝いていませんでした。あたりは真っ暗で、歩けば何かに躓いてしまいます。そんな暗闇に潜んでいたのは、タニホァ(Taniwha)という怪物でした。タニホァは自然の守護者としてとても力強く、闇夜になると動くものなら何でも食べ、昼間は湖底や深い川底で眠っていました。
偉大な戦士タマレレチ(Tama Rereti)は、タウポ(Taupō)という大きな湖の南の端に住んでいました。ある朝、タマレレチは、カヌーで湖に釣りに出ました。美しい穏やかな日で、魚もたくさん釣れたので、カヌーの上で昼寝をしました。彼が眠っている間にカヌーは湖の北の端まで流されて行きました。彼が目覚めたとき、カヌーが遠く流され、日暮れまでに家に帰ることができないことに気付きました。夜になるとタニホァがやって来て彼を食べてしまうだろう。空腹だった彼は、岸辺で火を焚き、魚を焼いて食べました。どうやって家に帰るか考えているとき、焚火に使った小石が光り輝いていました。
「湖を渡って帰る代わりに、空から大河に漕ぎ出そう」
タマレレチは、光る小石をたくさんカヌーに積み込み、川に向かって漕ぎ出しました。太陽が沈み、闇が降りてくると、カヌーは空に昇り、彼は光る小石を四方八方に撒き散らし始めました。カヌーの航跡は天の川となり、小石は星々となりました。タマレレチが小石をすべて投げ終える頃には、彼は空を横切って飛んでおり、夜明けの光の中で自分の村を見ることができました。そして、家に帰るとぐっすりと眠りに落ちました。
天空の父であるランギヌイ(Ranginui)は、美しく明るくなった夜に感動し、タマレレチのカヌーを夜空に永久に係留しました。
タマレレチのカヌー(Te Waka o Tamarereti)は、11月のニュージーランドで、日没直後にだけ見ることのできる星群です。地平線が天の川と一直線に並び、まるで地球が銀河に浮かぶかのようです。地平線上に見える明るい星々が、タマレレチのカヌーを形成しています。さそり座、ケンタウルス座、南十字座、りゅうこつ座、ほ座、エリダヌス座、きょしちょう座、かじき座、おおいぬ座、オリオン座、おうし座にわたる星々です。さそり座がカヌーの船首、南十字星が大きな石の錨、アケルナルがマストの先端、マゼラン雲が帆、カノープスが航海士、オリオン座の三ツ星が船尾です。(*4)
残念ながら、日本からタマレレチのカヌーを見ることはできません。
| (*1) | J. C. Andersen (1927) "Māori String Figures" |
| (*2) | 野口広 (1981) "図形あそびの世界" |
| (*3) | The story of Tama Rereti より |
| (*4) | How to find Te Waka o Tamarereti |