Last updated: 2023/01/15

あやとりトピックス 231-240

あやとりの展示 2023/01/15

東京都調布市「市民プラザあくろす」で昔遊びを広める会「たま川お手玉の会」による「折り紙、ときどきあやとり、そしてお手玉」という展示会が開催されました。

場所:東京都調布市国領市民プラザあくろす2階市民活動支援センター
日程:2023年1月4日〜1月21日
時間:10時〜18時(最終日のみ10時から15時)

「たま川お手玉の会」(代表伊藤ひでさん)は長年、調布市や狛江市で、幼稚園保育園、小学校、地域イベントなどで昔遊びを広める活動を続けてきました。

今回は市民活動センターで展示会を行いました。折り紙やお手玉の展示の中に、あやとりの展示があります。

あやとりは世界中にあることを伝えています。野口とも先生の言葉や、あやとりの書籍の展示もありました。

あやとりの展示は4人の高齢者がひとつひとつ手作りしたもので、数集まるとシンプルのなかにも美しく、目を引くものになりました。なかには「耳の大きな犬」や、「白鳥」「カエル」など難しいあやとりもあります。

この展示は、見た人に「私も何かできるのでは」という刺激を与えるものになり、展示の予約が増えているそうです。

吉田仁子@ISFA

「パターンあやとり」のすすめ その3:「二段梯子」を終了処理に使って 2023/01/11

長谷川浩氏が提唱する「パターンあやとり」の、ごくごく一部のご紹介です。 今回は「二段梯子」を終了処理に使ったあやとりとその応用です。 簡単な発想の転換で、誰でも創作あやとりができる、まさに「パターンあやとり」の真骨頂です。

長谷川浩氏のサイト「あそびをせんとや」の2022年10月23日のあやとりを参照してください。 ここにある

  1. パターンを人差し指と小指に移す
  2. 二段梯子

という発想が独創的で、今回注目してほしい点です。

以下はこの応用です。「二段梯子」を終了処理に使うと、左右に捻れた輪ができます(できない場合もあります)。それぞれに個性的な捻れた輪をお楽しみください。 なお今回は写真のご紹介にとどめ、詳しい取り方は表記いたしませんでした。取り方をお知りになりたい方は、国際あやとり協会までお問い合わせください。吉田がお答えします。なお、紐は多くは2.4mを使っています。

1:「ナウルの太陽」の後に「二段梯子」を行なったもの

「ナウルの太陽」
「ナウルの太陽」→「二段梯子」

2:「二つの星」の後に「二段梯子」を行なったもの

「二つの星」
「二つの星」→「二段梯子」

3:三重の「二つの星」の後に「二段梯子」を行なったもの

三重の「二つの星」
三重の「二つの星」→「二段梯子」
三重の「二つの星」→「二段梯子」→「二段梯子」

4:「テリハボクの花」の後に「二段梯子」を行なったもの

「テリハボクの花」
「テリハボクの花」→「二段梯子」

5:「アメアング」の後に「二段梯子」を行なったもの

「アメアング」
「アメアング」→「二段梯子」

6:ねじらない「ダンスの舞台」の後に「二段梯子」を行なったもの

ねじらない「ダンスの舞台」
ねじらない「ダンスの舞台」→「二段梯子」

7:「ダンスの舞台」の後に「二段梯子」を行なったもの

「ダンスの舞台」
「ダンスの舞台」→「二段梯子」

8:「焼け焦げた葉のククイ」の後に「二段梯子」を行なったもの

「焼け焦げた葉のククイ」
「焼け焦げた葉のククイ」→「二段梯子」

なお、あやとりの名称は石野恵一郎氏の「あやとりしてみよう」をご参照ください。

吉田仁子@ISFA

ガーナのあやとり未公開作品の紹介 2022/11/11

2022年9月および10月に、ISFA会員の大坂聡志くん(現在8歳で小学2年生)が、学校の国際授業の先生であるガーナ人のジョー先生から、二つのガーナのあやとり作品の取り方と、母国でのあやとりにまつわる経験について聞き取りを行いました。

大坂くんはあやとり教室指導員としても精力的に活動されており、その様子が地元紹介誌(*1)(*2)(*3)で多数紹介されているほか、 今月11月4日に発行された新聞記事には、今回のトピックスで紹介しているガーナのあやとり作品の聞き取りの件についても触れられています。

作品を教えてくださったジョー先生曰く、あやとりに歌や占い・宗教的な関わりなどは聞いたことがなく、母国ではあやとりは単に子どもの遊びだったそうです。 先生は小学生の頃に、母国で友達からあやとりを教わり遊んでいたとのことで、今でも覚えていらっしゃった二つの作品を大坂くんが聞き取りました。

その二つの作品について、ガーナのあやとりが掲載されいてる過去の文献(*4)(*5)(*6)を調べたところ、文献にはどちらの作品も記載がなく、 おそらくガーナのあやとりとしては未公開作品であったことが判明しました。

今回、大坂くんとジョー先生に作品公開の承諾をいただきましたので以下紹介します。

一つ目の作品は、世界では「ねずみ」や「指抜き」といった呼び名で知られる作品とよく似ていますが、 遊び方が少し異なり、一人ではなく複数人で遊ぶ作品です。先生曰く、作品の呼び名は分からないそうです。

【取り方】

  1. 左手の親指を上にして、左親指に紐をかける。一方の糸は手のひらに、もう一方の糸は手の甲に、それぞれ糸を垂らす。
  2. 次の1か2の工程のいずれかを行う。
    1. 右人差指を左手のひらの糸の下を通し、左親指と左人差指の間から甲の糸を上から引っ掛けて引き出し、向こうに半回転ひねる。ひねった輪を左人差指に上からかけて、右人差指の輪を放す。
    2. 右人差指を左手のひらの糸の下を通し、左親指と左人差指の間から甲の糸を上から引っ掛けて引き出し、引き出した輪を左人差指に上からかけて、右人差指の輪を放す。
  3. 2.1もしくは2.2と同様に、左人差指と左中指の間から糸を引き出して、左中指にかける。
  4. 2.1もしくは2.2と同様に、左中指と左薬指の間から糸を引き出して、左薬指にかける。
  5. 2.1もしくは2.2と同様に、左薬指と左小指の間から糸を引き出して、左小指にかける。
  1. AさんはBさんに「左手の人差指・中指・薬指・小指は悪い人です。どの人が捕まると思いますか?」と質問し、Bさんは、捕まると思う人にあたる指をAさんに伝える。
  2. Bさんの予想が当たっているか確認するため、Aさんは左親指の輪をそっと外し、右親指と右人差指で垂れた輪の手のひら側の糸を左小指の近くでつかむ。右手を右に引くと、2.1の工程をした指の糸は左手からスルスルと外れるが、2.2の工程をした指の糸は引っかかる(悪い人が捕まる)。

二つ目の作品は「ドラム」と呼ばれる作品です。4段ばしごの途中までの取り方となります。

【取り方】

  1. 人差指の構えから、親指の糸を外す。
  2. 親指を全ての糸の下を通し、小指向こうの糸をとる。
  3. 小指の糸を外す。
  4. 親指を人差指手前の糸の上を通し、人差指向こうの糸を下からとる。
  5. 小指を人差指手前の糸の上を通し、親指向こうの糸を下からとり、親指の糸を外す。
  1. 親指を人差指の輪の上を通し、小指手前の糸を下からとる。
  2. 人差指手前の糸を指の近くでつまんで親指の上にかける。
  3. 親指の下の輪を上の輪を超えて外す(ナバホ取り)。
  4. 人差指を親指の輪にかかっている三角の中に上から入れ、小指の糸を外し、人差指を下から向こうに回して上に向ける。手のひらを向こうに向けて展開する。
ジョー先生が大坂くんに、完成した「ドラム」の作品を披露しているところ。

このドラムの取り方を詳しく調べたところ、取り方の順番にとても興味深い点があることが明らかになりました。 それは、最初の取り方がドラムと共通の「4段ばしご」の地域性と関連があるということです。

日本や欧米で取られている4段ばしごの取り方と、アフリカでよく取られている4段ばしごの取り方では、工程3と4の順番が異なっていることが過去の文献で既に明らかになっています。 上記工程の順番でとるのが、アフリカでよく取られる4段ばしごの取り方で(*7)(*8)(*9)、工程3と4を入れ替えた取り方が、日本や欧米でよく取られている4段ばしごの取り方(*10)(*11)になります。

そして、ガーナのあやとりが掲載されているどの文献(*4)(*5)(*6)にも、「ドラム」だけでなく「4段ばしご」も掲載されていませんでした。 そのためガーナでも、4段ばしごの工程3と4の順番が欧米や日本と逆であることが、このドラムの取り方の順番から推測され、 4段ばしごの取り方において、アフリカでは欧米や日本と一部取り方が逆というのがよく見られることを後押しする発見にもなりました。

また、ドラムの取り方の工程3と4の順番を入れ替えた工程5までの作品(日本や欧米で取られている4段ばしごの途中までの取り方)は、 「ドラム」と完成形は同じですが、欧米では「猫のひげ」という呼び名で取られていることが、2011年のISFAの会報誌(*12)で掲載されています。

ジョー先生が生まれ育ったガーナのブロング=アハフォ州(現在はボノ州、東ボノ州、アハフォ州に分割されている)では、ドラムは伝統的なお祭りでよく用いられており、 小さなお祭りだと約二か月に一回お祭りが開催されていたようです。そうしたお祭りのたびにさまざまな形のドラムを使っており、ドラムは身近な存在だったとジョー先生は話されておりました。

この形の作品に対して、「猫のひげ」ではなく「ドラム」と名付けられていることから、それだけ「ドラム」が身近な存在であったことが推測され、 それを裏付けるお話も伺うことができました。あやとり作品の新たな発見によって、その国の風習が垣間見れるのはとても面白いことだと思います。

こうしたあやとりの面白さ・新たな発見を伝えてくださり、作品紹介を承諾していただきました大坂くんとジョー先生、文献調査にご協力くださいましたISFA代表のシャーマンさんに御礼申し上げます。 また今回の記事作成にあたり、ISFA会員の加藤がジョー先生に追加取材を行いました。取材にご協力していただきましたジョー先生に改めて感謝申し上げます。

最後に大坂くんのコメントを紹介します。

(大坂くん) これまで多くの人があやとりを採集してきましたが、私が採集出来るとは夢にも思わなかったので、今回の事で2つも採集出来て嬉しく思っています。 思い切って質問しにいって良かったと思うし、色んな方に協力してもらってとても有り難かったです。

(*1)子どもも楽しい夏に -大坂さんのあやとりも-』、タウンニュース (2022/08)
(*2)多世代交流の場を -まちの先生が活躍-』、タウンニュース (2022/08)
(*3)神奈川で最年少 あやとりの先生』、タウンニュース (2022/11)
(*4) C. L. T. Griffith (1925) "Gold Coast String Games"
(*5) G. S. Cansdale (1993) "Ghana String Figures"
(*6) C. C. K. Smith (2000) "Some String Figures and Tricks from Sierra Leone and the Gold Coast", BISFA 7: pp.94-100
(*7) W. A. Cunnington (1906) "String Figures and Tricks from Central Africa", pp.123-124
(*8) A. C. Haddon (1906) "String Figures from South Africa”, pp.145-146
(*9) J. Parkinson (1906) "Yöruba String Figures" pp.132
(*10) T. Saito (2004) "String Figures of Japan", BISFA 11: pp.143-147
(*11) C. F. Jayne (1906) "String Figures: A Study of Cat's-Cradle in Many Lands": pp.24-27
(*12) M. Probert and V. Probert (2011) "Devonshire String Figures from the 1890s", BISFA 18: pp.5
加藤直樹@ISFA