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あやとりトピックス 071-080

椅子と「あやとり」 2003/11/22

今回は、椅子と「あやとり」について二つの話題です。

皆さんの愛用の椅子は、どのようなものでしょうか。素朴な四本脚の木製椅子、ロッキングチェアー、あるいはスチール回転椅子、…。はじめに取り上げるのは、座面部と脚部が別々になっており、その組み合わせが選べるタイプの椅子の話です。

その脚部 (ベース) の骨組みには、いろいろなデザインがあり、それぞれに名称があるようです。その中に、骨組みパイプが複雑に組み合った「キャッツクレイドル (あやとり)」があります。インターネットで、[椅子 キャッツクレイドル] で検索してください。見本が見られます。なるほど、絡み合っていて、あやとりの作品のようにも見えます。

次は、あやとりの「椅子」を紹介しましょう。こちらはアンティークな椅子;一族の長老が座る、凝った装飾彫刻が施された、低い背もたれの椅子です。中国のあやとり愛好家の創作です ⇒ 長老の椅子

TS

「あやとり」の著作権について 2003/11/01

会員の方から、「あやとり」の著作権について問い合わせがありました。この機会に、ISFA日本語サイトの見解を記しておきます。

過去にも、「創作あやとり」の盗作まがいの行為や「伝承あやとり」の研究資料の盗用が、全く無かったわけではありません。しかし、

  1. 「伝承あやとり」そのものには著作権はないとされていたこと;
  2. 「創作あやとり」は、世界各地に点在する愛好家が、それぞれの仲間だけで楽しんでいたので、その著作権は問題にならなかったこと;

から、「あやとり」の著作権についてのガイドラインはありませんでした。

しかしこの十年ほどの間に、「あやとり」を取り巻く状況に大きな変化が現れてきました。一つは、世界のあやとり愛好家がインターネットを通じて、瞬時に連絡を取り合える状況が生み出されたことです。誰でも自分の「創作あやとり」を世界中に公表できます。それで、公表された ‘作品’ と全く同じあやとりを、あなたが先に考案/公表していたというケースも想定されます。

もう一つの、より重要な変化は、あやとりを伝承してきた社会の人々が、自ら「あやとり」について発言をするようになってきたことです。

  1. ネイティヴ・アメリカンのナバホの人々は、自分たちの社会の中だけで継承してきた「伝承あやとり」を、2002年からインターネットを通じて ‘外の世界’ へ発信しています (ナバホのあやとり)。

  2. オーストラリア・アボリジニの人々が、「伝承あやとり」を自分たちの社会が生み出した「アート」として、その〈知的所有権〉(*1)を主張しています。在オーストラリアのISFA会員がその著書に、あるアボリジニのあやとりを収録するため許可を求めたところ拒否されたケースがあります。

このような状況の変化に対応して、これからは、「あやとり」の著作権について一通りのことを心得ておく必要があります。以下に、「あやとり」を著書やウェブサイトに掲載する場合や実演する時の注意点を列挙しました。

「あやとり」の著作権 [version 1.0, 2003.11.01]

  1. 日本の伝承あやとり:「伝承あやとり」そのものには、著作権はありません。
    1. あなたが、おばあさんや友だちから教えてもらった「伝承あやとり」は、どのような形式でも利用できます。

    2. 既刊の本に掲載されている「伝承あやとりそのもの」を、自分の著書やウェブページで紹介することはできます。礼儀として出典明記しておきましょう。しかし、その本の写真やイラストは許可を得なければ使えません。解説文や伝承者名などのデータ類は、「引用」の形式で利用できます。その「伝承あやとり」の取り方や名称を変更する場合は、変更したことを記しておくべきです。既刊本の著者の死後50年でその本の著作権は消滅しますが、いろいろ例外もあるので注意が必要です。

  2. 海外の伝承あやとり:
    1. あなたが、世界各地で直接教わった「伝承あやとり」は、伝承者の了解が得られれば公開できます。

    2. 既刊の本に掲載されている「伝承あやとり」:
      1. 日本の本に掲載されている場合:
        「海外の伝承あやとり」が日本で紹介されるようになったのは1970年代のことです。以後100冊以上のあやとりの本が出版されていますが、その内容は、初期 (70年代) の数冊の優れた本からの焼き直しが多いようです。また、ちょっとした思いつきで改変されたとおぼしき名称や取り方もあります。さらに、掲載あやとりについての説明がなく、読者にはそれが日本/海外どちらのあやとりか判らないケースさえあります。このような、雑な作りの本が次々と出版された背景には、〈あやとりは日本だけで伝えられてきた他愛ない子どもの遊び〉という間違った思いこみがあると思われます。
        この種の本からの利用も 1.b と同様です。しかし、上記の雑な作りの本からの引用は、個々のあやとりについての誤った情報を公表/発信してしまう危険性があります。さらに、ナバホの人々のように、伝承者自らが「あやとり」を発信する今の時代、以前は正しい内容と評価されていた文献でさえ通用しなくなることもありえます。‘外の世界’ から訪れた研究者に対して、伝承者が個々のあやとりに伴う名称/唄/物語の真の意味を包み隠さずに話していたとは限らないからです。今後は、伝承者自らが「あやとり」について発言する機会が増えることが予想されます。つねに、最新の情報を得ることを心がけて下さい。そして、オーストラリア・アボリジニの人々から、“「あやとり」に〈知的所有権〉がある” との声があがっていることをお忘れなく。

      2. 海外の一般向けの本に掲載されている場合:
        原則的には 1.b と同様です。ただし、「引用」の形式 (許容される文字数など) が日本の場合と異なるので、確認が必要です。

      3. 海外の学会誌に記載されている場合:
        学術論文と同じ扱いになります。

  3. 創作あやとり
    1. あなたが、‘新しい’ あやとりを「考案」しただけでは、そのあやとりに著作権は発生しません。それを出版物やウェブページで公表すれば「著作物」として、著作権法の保護の対象になります。
      以前のように、自分の生み出したあやとりを、友だちや愛好家仲間の間だけで楽しんでいる限りは問題ないでしょう。しかし、インターネット上で、そのあやとりと全く同じものが、他の人の ‘創作’ として発表されているかもしれません。それを見つけた時、“同じ事を考える人はいるものだ” で済ませられるなら、それも問題ないです。しかし、先取権を主張したいのであれば、出版物で発表しておく必要があります。
      作者名の明記されている「創作あやとり」を、あなたの著書やウェブサイトで紹介する場合について:事前にそのあやとりの「著作権者」の許可を得て下さい。「著作権者」は、作者自身だけではなく、記載出版物の刊行者の場合もあります。そのあやとりの取り方や名称を無断で変更すると「著作権侵害」になりますので、この点は特に注意してください。

    2. 「あやとり」の実演について:
      ヨーロッパやアメリカの ‘ストーリー・テラー’ の中には、図書館や学校で、あやとりを見せながら自作のお話を聞かせる人たちもいます。国内でも、このような活動をする人が出てくるかもしれません。そのような一回限りの場で「日本/海外の伝承あやとり」を見せることに問題はないでしょう。しかし、そのパフォーマンスの内容が出版物に収録されたり、TV番組や個人ビデオの映像記録として残る (=再現性が確保される) 可能性がある場合は、上記 1.~2. と同様の配慮が必要です。

以上。

大多数の方は、たかが「あやとり」にたいそうな話だと思われるでしょう。しかし、一方で、アボリジニの人々のように、〈あやとりはアートである〉と理解する人たちが、着実に増えていることも確かです。あなたが、世界の「伝承あやとり」や「創作あやとり」をどのように扱うか、— それは結局、あなた自身の「あやとり」に対するセンスを問われているのです。

(*1) 「知的所有権 (知的財産権)」には、特許権などの「工業所有権」と、文化的な創作物を保護の対象とする「著作権」があります。「あやとり」の場合は、後者に相当します。
この記事を作成するに当り、下記のサイトの「はじめての著作権講座」を参考にさせていただきました。
社団法人 著作権情報センター》https://www.cric.or.jp/
Ys & TS

「はしご」についてQ&A 2003/10/18

ISFAのロゴマークにも採用されている「はしご」(「四段ばしご」) は、世界に広く分布しています。その「はしご」の他の段数を作る試みは日本の伝承あやとりのレパートリーにもあります(*1)。また、あやとりファンだけでなく、パズル愛好家もこの問題には興味を引かれるようです(*2)。この項では、その「はしご」についてQ&A形式でまとめました。

(*1) 夏堀謹二郎 (1986)『日本の綾取』、有紀書房
(*2) 中村義作 (1976) “あやとり いろいろな段の「はしご」を作る”、『数理パズル』池野信一・高木茂男・土橋創作・中村義作 共著、中公新書 427、中央公論社、1976: pp.92-100

Q1:「はしご」の段数は、どこまで増やせますか?
A1:

「交わり」(左図左) と「絡み」(左図右) にこだわらなければ、何段でも増やすことができます。

「5段ばしこ」は、4段の最後の展開の直前に、片手にかかっている2本のループを1ひねりすれば出来上がります。また、「6段ばしこ」は、両手にかかっているループを1ひねりすれば完成します。ここまでは、伝承あやとりとして、よく知られています。しかし、この方法では、これ以上の段数に増やすことはできません。

子供の頃に、6段からさらに増やす工夫をされた人もおられるでしょう。その手法は、伝承という形式ではなく、人それぞれに独自の発見をくり返してきたようです。下記の文献では、6段以上の「はしご」の取り方を系統立てて説明しています(*3)

その方法を用いれば、偶数・奇数を問わず、幾つでも段数を増やすことができます。左図は「交わり」だけの「10段ばしご」。

(*3) Ali R. Amir-Moez (1992) "Residue Classes and String Figures" Bulletin of String Figures Association (BSFA), Vol.18: pages 90-125 [a French to English translations of Amir-Moez's 1968 paper]
Storer, T. (1988) "String Figures" BSFA Vol.16 - Supplemental Issue in Two Parts: Part I
Sato, T. (1979) "Ladders" Ayatori News 1:3-5 [in Japanese]

〔追記 2004/10/10

上記 (Sato, T. (1979) "Ladders") の概要を、《知恵の糸BBS》で説明しています (No.10 2004/10/01)。
Q2:「はしご」パターンの、自分の好きなところに、「交わり」と「絡み」を入れることは可能でしょうか?
A2:

一本のループだけでは不可能です。しかし、ループを2本用いれば任意の「交わり」や「絡み」を入れることができます。まず、パターンに現れる「交わり」と「絡み」を方向性を含めて数量化し、その総和を求め、用いるループを、1本のループ/2本のループ (リンクされていない/いる) から選択。そして、1段ずつ作り上げる Kenshu Kamiya の方法が知られています(*4)。以下は、そのサンプルです。いろいろな箇所に、様々な絡みが導入でき、一風変わったはしごができるのです。

1本ループ:4段ばしご
1本ループ:5段ばしご
2本ループ (リンクなし):5段ばしご
2本ループ (リンクなし):7段ばしご
(*4) Kamiya, K. (1982) "Ladders, entangled and crossing" Ayatori News 9:1-4 [in Japanese]
Sato, T. (1996) "Ladder String Figures: A Systematic Approach" Bulletin of the International String Figures Association (BISFA) Vol.3: pages 93-107
Q3:「多段ばしこ」を形良く仕上げるコツは?
A3:

「多段ばしこ」を展開するとき、中央部の糸が重なり合って、ダイヤのパターンがよく分からないことがあります。どうしてそうなるかというと、中央部のダイヤとなる糸と、両端のダイヤや枠を形成する糸の配分が、後者に偏りすぎているからです。

パターン中央の右側の糸を左へ、左側の糸を右へ強く引き出して、配分を調節すると、パターンを美しく仕上げることができます。このテクニックは、他の複雑なパターンのプレゼンテーションの際にも利用できます。

Q4:「多段ばしこ」をもつれないでほどくコツは?
A4:

ほどくには、パターンを指から離して、ひざや平らなところに置き、図のように上下の枠を形作る糸をその真中で取り上げ、パターンをゆらしながら上下方向にゆっくり引きます。この方法は、上下に枠のある左右相称的なパターンに応用できます。

TS

「天秤棒」という名称 2003/10/04

「世界で一番簡単なあやとり」(トピックス 065) で「物差し」を紹介しました。これは伝承あやとり「盃/箱枕—エプロン—電球—」の最後の形です。その後、会員の方から、この「物差し」が「天秤棒」と記述されているウェブページがあるとの情報が寄せられました。

そのサイトは、《あそびをせんとや》。1970年代、エッシャー、福田繁雄、安野光雅らの作品とともに、〈遊びの数学/芸術〉をテーマとする本 (『遊びの博物誌』、『美の幾何学』、『算私語録』、『ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環』…) が脚光を浴びたことがあります。《あそびをせんとや》は、そのエトスを継承・発展させた内容で、‘創造的な遊び心’ のある人たちを楽しませてくれます。

さて、その2002年2月4日の項に、このあやとりが取り上げられていて、「箱枕—エプロン—電球—天秤棒」となっています。“あそびをせんとや” 氏にお尋ねしたところ、この時代を感じさせる呼び名「天秤棒」は、明治44年生まれ、長野県小諸出身のお祖母さまから伝えられたとのことでした。

天秤棒は長さ2m、直径6cm前後の堅い木の棒。その両端に水の入った桶や土砂を詰め込んだかごなどを吊るし、肩に担いで運搬するのに使用した補助道具です。先日、『日本 映像の20世紀』(NJK-ETV) を見ていると、天秤棒で水桶を運ぶ女性の姿が映っていました。当時の体験者の話によれば、鳥取の砂丘地帯、灌漑設備のない畑地での水やり作業は、たいへんな重労働であったそうです。この地方では、灌漑用水のパイプラインとスプリンクラーが普及する昭和30年代半ばまで、天秤棒での水運びがなされていました(*1)

“あそびをせんとや” 氏は、「てんびんぼう」というのがなんなのか全くわからないまま、その名前を覚えたそうです。子どもにとって、意味不明の言葉は呪文のようなもので、かえって深く記憶に残ることがあります。その子が成長して、‘呪文’ の意味が解けた時、そのあやとりだけでなく、幼い日々に家族や友達とあやとり遊びをした懐かしい情景までもが蘇ることもあるでしょう。そのような体験は、また次の世代へあやとりを伝える動機ともなりえます。ですから、たとえ子どもたちが知らない物であっても、その名称を伝えることは意味のないことではありません。

しかし、そのような ‘呪文’ の伝授は、祖母・孫、母・子のような親密な間柄でなければ難しいかもしれません。教室のような場では、従来の名称にこだわらず、子どもたちの新鮮な発想にまかせて、「この形は何に見えるか?」と聞くことをお勧めします。その中には、これから10年20年と受け継がれていく、すばらしい名前もあるでしょう。

「天秤棒」そのものを日常生活の中で使うことはなくなりました(*2)。しかし、その言葉から、星占いのてんびん座、その天秤の梃子 (棹) を連想する子どももいるかもしれません。とすれば、この呼び名もまだ伝えられていく可能性はあります。数十年後、この最もシンプルな形のあやとりはどのように呼ばれているのでしょうか — 「物差し、天秤棒、???」。

(*1) NHK鳥取『日本映像の20世紀 - 鳥取県』(1999/5/22 ON AIR)。このシリーズは、4月から深夜に再放送中。
(*2) 昔の天秤棒の写真、錦絵などは、インターネット検索「天秤棒」からどうぞ。天秤棒の水運びが体験できる博物館もあります。
Ys

博多人形「あやとり」 2003/09/27

先日、博多に行く機会があり、博多駅の土産物売り場でウロウロしていますと、当然のことながら、博多人形が目にとまりました。その中に、女の子が「手まり」や「折り鶴」を手にのせて遊んでいる人形に並んで、「あやとり」という可愛い作品を見つけました (人形の写真をご覧になりたい方は、インターネット検索「博多人形 あやとり」から掲載ページへ)。

同じ題名の人形が3体あり、その手には、簡単なX字型のパターン (左図) が掛かっています。この形は、伝承の「一人あやとり」の途中 (「川」から「田んぼ」に移っていくところ) の形ともとれなくはないのですが、その場合とは糸の持ち方や糸の走り方が違います:こちらは、X字の左右のスペースに親指以外の指を入れて保持しています。

あやとり愛好家の目は、どうしても「あやとり」そのものの方へ向いてしまいます。しかし、人形としてのおさまりは、この当たりさわりのないシンプルなパターンの方がよいことは言うまでもありません。あまりに複雑な形であれば、一般の人でも、そちらに目を奪われてしまいますから。

〔追記 2006/01/01

後日、福岡空港内の店頭で見かけた博多人形です。

TS

「カガミとあやとり」 2003/09/13

鏡を使った様々の楽しい実験遊びを紹介した本を見つけました:立花愛子 著・田島董美 絵『たのしい科学あそび — カガミの実験』(さ・え・ら書房刊、1999/04)。その中に「カガミとあやとり」の項目があります (10~13頁)。

図 (A) のように、糸の両端を鏡に貼り付けて、右手親指・小指に掛けます。鏡の像と合わせると、あたかも〈初めの構え Position 1〉のように、左右両手であやとりのループを持っているように見えます。さて、鏡の中の ‘左手’ の手のひらの糸を右手の人差し指で取ろうとしても、当然のことながら、鏡にぶつかって取れません。‘左手’ の糸を取ろうとすると、鏡の中の像も同じ動作をします。これは、鏡に映っているのは、左手ではなく右手の像であり、鏡からの距離が逆転している状態にあるということです。

ここにありますのは、“あやとりは、片手でもう一方の手の糸を取り合って編み上げる” という考えです。この考え方だけであれば、図 (A) のように鏡に糸を貼り付けた場合、「あやとり」はできないことになります。この本での考察はここで終りです。

あやとりの基本的操作の一つ、“両手で互い違いに取り合う” ことはできないのなら、もう一つ基本的操作、“それぞれの手で同時に同じ側の手の糸を取る” の方はどうでしょうか。はじめに、一本の糸を図 (B) のように鏡に貼り付けて、〈人差指の構え Opening A〉に相当する形を作ります。このパターンから、右手だけで「左右へ走り去るコヨーテ」を取ってみましょう(*1)

最後に、鏡に貼り付けた二つのループを外せば、一匹のコヨーテが現れます—図 (C)。鏡の中の像と合わせれば、「左右へ走り去るコヨーテ」の出来上がり。このあやとりは、“両手で互い違いに取り合う” 基本操作から始めて〈人差指の構え Opening A〉を作るのですが、この時生じた絡みは最後には解消されます。それで、この鏡に貼り付ける方法でも同じパターンが作れるのです。

このような、鏡対称 (左右相称) の形のあやとりは他にもいろいろあります。伝承あやとりの「二本ぼうき」(*2)を、この鏡に貼り付ける方法 (図 (B) から) で作れるか試してみてください。また、鏡対称ではない「七つのダイヤ」(トピックス 086) では、どのような形が現れるでしょうか?

もう一歩進んで、鏡を使わないで、両手で図 (B) に相当するパターンを作る方法も考えてみましょう。このように、いろいろと工夫を積み重ねていくと、新しいパターンの発見につながることもあります。

(*1) ナバホのあやとり、「左右へ走り去るコヨーテ」。 図 (B) から作る場合は、2~12を右手だけで;
  1. 人差指の構え。
  2. 親指を人差指の輪の上を通し、小指の輪に下から入れ、その手前の糸を取る。
  3. 中指を人差指の輪の上を通し、下から親指向こうの糸を取る。
  4. 親指の輪を外す。
  5. 親指を人差指の手前の糸の下、向こうの糸の上を通し、下から小指向こうの糸を取る。
  6. 小指の輪を外す。
  7. 親指を人差指の輪の上を通し、下から中指の輪に入れ、そのまま抜き取る。
  8. 人差指を上から親指上の輪に入れ、移し取る。
  9. 人差指下の輪をナバホ取り (上の輪を越えて外す)。
  10. 親指で下から人差指の手前の糸を取る。
  11. 親指下の輪をナバホ取り (上の輪を越えて外す)。
  12. 今はずした糸 (親指の輪に掛かる上側の糸) を、親指の腹で押さえ込みながら — それにつれ、親指の輪は滑り落ちる — 手のひらを向こうに向け展開。
取り方のビデオ画像は、「ナバホあやとり」のウェブ・サイトにあります (cf. トピックス 030 ナバホのあやとり):
  • Dine Education Web》 → Activities → Dine String Games → Text of Introduction with Footnotes → FOOTNOTES: 9 "Coyotes Running Opposite Ways" をクリック。 ナビゲーションは変更されています
  • 「Coyotes Running Opposite Ways」のページ、取り方の英文説明の下にある "WATCH VIDEO" をクリック。
(*2) あやとりの本では「キツネのタンポポ」の名称もあります。取り方の変化を伴いながら世界各地に分布、ネイティブ・アメリカンのチェロキーの人々は「Crow's Feet」と呼んでいます。文字通りの「カラスの足跡」を意味しているのか、そこから派生した「目尻のしわ」を指しているのかは不明です。
TS & Ys

『遊べや遊べ!子ども浮世絵展』 2003/09/01

8月30日から10月5日まで、京都文化博物館で『遊べや遊べ!子ども浮世絵展』が開催されています。この展覧会では《くもん子ども研究所》の所蔵する「子ども浮世絵」、遊戯具など約200点が展示されています。京都では、室町時代から江戸中期の「奈良絵本・奈良絵巻」も特別展示。また、会場内には、江戸玩具やおもちゃ絵の複製が用意され、子どもたちが実際に ‘見て、触れて、遊べる’ コーナーもあります。

さて、《くもん子ども研究所》の収蔵品には、あやとり遊びの情景を描いた「子ども浮世絵」があります → あやとりの絵画などの芸術作品。この中の、歌川広重の多色刷木版画『風流おさな遊び』は、今回の展覧会で鑑賞することができます。

後に風景版画の大家となった広重の『風流おさな遊び』には、当時の江戸の女の子の遊び十二種が描かれています(*1)。一つ一つの絵は小さいのですが、写実的に描かれた女の子たちの表情、しぐさには見飽きぬものがあります。「あやとり」では、これから糸を取り上げようとする左の子の手つきが見所でしょうか。同じ趣向で男の子の遊びを描いた『風流をさな遊び』が会期の前半 (8/30~9/15)、この『風流おさな遊び』は後半 (9/17~10/5) のみの展示となっています。

ところで、あやとり遊びの情景を描いた最古の文献は、享保九年 (1724) に刊行された、木版絵本『絵本大和童』です(*2)。作者は京都在住の美人画絵師、西川祐信。重陽の節供 (旧暦九月九日) の場面、菊の花遊びをする子どもたちのかたわらで二人の女の子が ‘いととり’ をしています → あやとりの絵画などの芸術作品。その『絵本大和童』上巻を、彩色模写した一冊の画帖『童子遊興之図』(作者未詳) も展示されています。

山口、香川、京都を巡回してきたこの展覧会、2004年には、いわき市立美術館や原宿の太田記念美術館での開催が予定されています。詳しくは《くもん子ども研究所》のサイトでお調べ下さい。

(*1) 歌かるた、あやとり、ままごと、おいばね (はねつき)、きさごはじき (おはじき)、道中すごろく、手だま (お手玉)、手まり、ほたる狩り、ぼんぼん、おりもの (おりがみ:かえる、かぶと、はこ)、狐つり
(*2) Shishido, Y. (2001) "Cat's Cradle in the literature of Early Edo Japan", Bulletin of the International String Figure Association (BISFA) Volume 8:pp.21-38
Ys

〔追記 2008/12/26

上記の『風流おさな遊び』ならびに『童子遊興之図』の綾取り遊びは、『江戸子ども百景』(河出書房新社、2008) に収録されています。

TS

「珍しい魚」のあやとり 2003/08/23

夏休みは、海の生き物との出会いの季節でもあります。このサイトでも ‘珍しい魚’ を紹介しましょう。もちろん、あやとりの…。

南米ガイアナの Warrau の人々が伝えてきた、「ヨツメウオ」(Anableps sp.) です。この魚、メダカの仲間で体長は約30cm。左右の目が突き出ており、その目の中央部に、虹彩の一部が変化した水平の ‘仕切り’ があるので、四つの目があるように見えます。それが名前の由来です。網膜も上下で異なる組織構造になっているので、この仕切りがちょうど水面にくるように泳いでいると、水面から上の世界と、水中の様子を同時に見ることができるのです。

この魚の仲間は、メキシコから南米北部に分布しています。私たちには全くなじみのない魚と思ってサイト検索すると、すでに、鳥羽水族館や須磨海浜水族園のサイトで紹介されていました。さらに驚いたのは、この魚をホームアクアリウムで飼育している方がおられることです(*1)。簡単に飼えるようであれば、これから人気者になるかもしれません。

そのサイトにあるヨツメウオの美しい生態写真をご覧になれば、このあやとりが、その魚の特徴を見事にとらえていることがわかります。ことに、上向きの小さなループで突き出した目を表現しているところが独創的です(*2)。長い年月、この魚を眺めて (食べて?) 暮らしてきた人々ならではの傑作と言えましょう。

(*1) Marli's MUDSKIPPER LAND:番外・大めだか「ヨツメウオ」の画像をクリック。
(*2) このような上向きのフリーループのある立体的パターンは、他にはパタゴニアの「スカンク」だけのようです。
Ys

あやとりBBS 2003/08/16

ISFA会員の方が、今年の2月に「あやとり」を中心としたサイト《知恵の糸》を開設されました(*1)。その「あやとりBBS」のページは、初心者の方、大歓迎とのことです。管理人の千縁さんとあやとりファンが、気軽に ‘あやとり話’ できる場として発展していくことを期待しています。

このISFA日本語サイトの感想なども、ご遠慮なく、書き込んで下さい。また質問にもできる限りお答えしたいと思っています。場合によっては、こちらの「あやとりトピックス」で、その話題を取り上げることもあるでしょう。ISFA日本語サイトは、《知恵の糸》を応援いたします。

(*1)
Ys & TS

切手に描かれたあやとり -4 ノルウェー 2003/08/09

1956年以来、ヨーロッパ諸国では、統一テーマの「ヨーロッパ切手」を発行しています。1989年のテーマは「子どもの遊び」。参加35ヵ国 (80種) の中で、ノルウェーだけが「あやとり」を取り上げました ⇒ あやとりの切手。母娘 (?) で楽しむ「二人あやとり」のデザイン。私たちにはおなじみの情景です。ちなみに、2種のもう1枚には「スノーマン (雪だるま)」が描かれており、この遠い北欧の人々に親しみを覚えます。

グリーンランド、カナダ、アラスカ、シベリアなどの極北圏では冬の長い夜の楽しみとしてあやとりが伝承されてきました。ロシア中央部から西部の極北圏や北欧ラップランド地方の調査報告はないようですが、これらの地方にあやとり遊びが存在しても不思議ではありません。ISFAは、ラップランド地方の調査を望んでいるのですが、残念ながらまだ実現していません (「極北圏のあやとり」プロジェクト)。この切手は、北欧のノルウェーにもあやとりがあることを明示する貴重な資料なのです。

あやとりの世界には、たくさんの謎があります。「二人あやとり」の起源もその一つです → “Cat's Cradle” (猫のゆりかご) の語源。ノルウェーには、いつ頃、どのようなルートで伝わったのでしょうか?皆様の協力を得て、謎解きを進めていければと思っています。北欧諸国をはじめ、世界各国のあやとりについての情報をお待ちしています。

Ys