「あさがお」 日本ほか
《さいとうたま あやとりコレクション 》
さいとうさんも少女時代 “両手を寄せては花が「しぼんだ」、広げて「開いた」といって遊んだものだ” そうです — 山形・山辺。同じ村の中でも、年長の人たち (1920年代生まれ) の呼び名は「馬の口」。荷運びなどをさせる馬に付ける、縄で編んだ籠状の口覆いのことです。
他にも、「灯台アヤ」(福島・伊達)、「ラッパ」(栃木・宇都宮、長野・清内路)。花の名前としては「百合」もあります (三重・美杉、東京)。
新潟・佐渡だけで聞かれた名称は「そらかご、かご」。ややいびつなロート状の籠で 堆肥を運ぶために使います。背中に合うように生木をたわめて骨格を作り、それに縄を細かく巡らせて横のふせぎにしてある背負い籠です。
取り方:『あやとりいととり 2 』(pp.6~7 あさがお)
このあやとりは日本だけで伝承されてきたのではありません。
ネパールのタンセン、ポカラでは「Doko」。中に赤ん坊を入れて運ぶ背負い籠のことです (Titus, 1998)。雲南省・麗江 (会報表紙写真) やチベットのラサでは「角笛/ラッパ」(Wirt, 1998)。
北アメリカ大陸では、アラスカに「かご状の網」があります (Jenness, 1924)。また、ニューメキシコ州に暮すプエブロやズニの人々は、口でくわえる代りにもう一人が指で持ち上げ、そのパターンを「小屋」、「藪の家」と呼んでいます (Jayne, 1906)。南アメリカ大陸、チリのパタゴニア地方のマプーチェ (アラウカーノ) の人々の名称は「家畜の首にぶら上げる鈴」(Martinez-Crovetto, 1970)。
Ys 2006/07/28
取り方: 朝顔
「テリハボクの花」 ナウル
19世紀末にリン鉱石の発掘が始まる以前、ナウル島の中央台地はテリハボク (Calophyllum inophyllum) がうっそうと茂っていたそうです。材は建築やカヌーに、種子油は薬や灯明などに用いられました。島の人々の暮らしとともにあったこの植物、今はナウルの ‘国の木’ に指定されています。
6~7月頃、小さな花がたくさん集まって咲き、芳しい香りを漂わせます。このパターン、真中のダイヤはめしべ・おしべ、両側は花弁でしょうか。
このあやとりを取る時は、「i bur in ijo, me eman in ijo テリハボクのつぼみ、テリハボクの葉っぱ」とくり返し唄います。そして最後に、パッと花が開くようにパターンを広げます。
詳しい解説と取り方:"String Figure Magazine" Volume 9, number 3 (September 2004) (ISFA会員 のみが取り方を閲覧できます)
Ys 2005/02/27
取り方: テリハボクの花
「ナイオの木」
「‘赤い花’ マロ」
ハワイ先住民 (カウアイ島・ニイハウ島)
「ナイオ naio」(Myoporum sandwicense ハマジンチョウ属) は、ハワイ諸島の自生種。きめの細かい堅固な木材は、アウトリガーカヌーの舷の厚板、家屋の柱、夜間の漁に使うたいまつなどさまざまな用途がある。白檀材に似た芳香があるが、その香りが長続きしないので「ニセビャクダン」とも呼ばれる。
このあやとりは、ナイオの幹と枝ぶりを立体的に表わしています。
♪
O ka-naio, O ka-naio.
O ka lua a kane,
I haki a'e la i ka makini Hakalau.
Lewa lu nanai o kahi i kau ai o ka malo o pua-ula.
Oh, naio tree, Oh, naio tree.
Oh, the destruction by Kane
Shattered in the Hakalau wind,
Swinging, scattered, stripped, where hangs the red-flower malo.
おー ナイオよ おー ナイオよ
おー カーネ神による破壊
ハカラウの風に打ち砕かれた
揺らされて 散り散りにされ 裸にされた
‘赤い花’ マロを掛けるナイオが ♪
「‘赤い花’ マロ (ka malo o pua-ula)」とは、赤く染めたタパ布で作った腰布 (褌) で、首長クラスだけが身につけることができました。あやとりを取り続けると、枝に掛けられた「マロ」が現われます。
♪
kahi i kau ai o ka malo o pua-ula.
‘赤い花’ マロを掛ける場所 ♪
「ナイオ naio」については、ハワイ・ビショップ博物館 の《伝承民族植物学》のページへ。
Ys 2009/09/28
取り方: ナイオの木