Last updated: 2020/12/19

道具のあやとり

ここでは、道具のあやとりを紹介しています。

「ぱんぱんぼうき」

日本ほか

さいとうたま あやとりコレクション》 両手を合わせて、パッと開くと「ほうき」が現れます。取り方も簡単で幼い子に人気のあるあやとりです。

取り方:『あやとりいととり 1』(pp. 6 ぱんぱんぼうき)


このあやとりは日本だけでなく世界各地で伝承されていました。

極北圏では「(鳥を射落とす) 投げ矢」(グリーンランド)、「テント」(カナダ)、「カモ猟の槍」(アラスカ)。カナダ・バンクーバー島のクワクワカワク (クワキウトル) の人々は「タコ (蛸)」・「(ウニに突き刺す) 槍」、その対岸 (北米大陸) 少し内陸部に住む先住民トンプソンの人々は「テント」。南アメリカ、ペルー北東部では「木」。

オーストラリア大陸とニューギニア島を隔てるトレス海峡のマレー島や、メラネシアのローヤルティ諸島・ソロモン諸島では「(魚を突く) やす」。フィジーでは「タコノキ」。

アフリカ大陸では、スーダン北部ヌビア語を話す人々は「秤 (はかり)」と呼び、タンザニアの東沖のザンジバル島では「ココヤシ」の名称が知られています。

Averkieva, J.P. & M.A. Sherman (1992) Kwakiutl string figures. American Museum of Natural History, Anthropological Papers 71. Seattle: University of Washington Press. (232 pages) :pp.102-104
Wirt, W. (1997) "String Figures from Northeastern Peru" Bulletin of the ISFA 4 : pp.120-134
Ys 2007/06/16

取り方: ぱんぱんぼうき

「はしご」

日本ほか

さいとうたま あやとりコレクション

取り方:『あやとりいととり 2』(pp. 8-9 四だんばしご)


出典:夏堀謹二郎『日本の綾取』


このあやとりは日本だけでなく世界各地で伝承されていました。しかし、発祥地や伝播ルートは全く不明のままです (「あやとり」の発祥地)。

出典文献の詳細は こちら

Ys 2007/11/16

取り方: 四段ばしご

「はたおり」

日本

さいとうたま あやとりコレクション》 パターン中央の糸の交差の上下運動を「はたおり」に見立てています。この上下の動きからの連想はそれだけにとどまらず、遊び手たちはいろいろな名前を付けていました。

ほかにも、カチカチ山:岐阜 (昭和10年代生まれの姉妹)

ところで、2008年春に放送されたNHKTVの『熱中時間』では、このあやとりがスイスの「ミシン」として紹介されていました。1975年にドイツで制作された『映像百科辞典』に、スイス・バーゼル地方の小学生の女の子が作っている映像があるからです。しかし、日本では明治生まれのご婦人からも採集されており、上記の多彩な呼び名で東北から中国地方まで広く知られていました。この動きのある楽しいパターンは、日本の伝承あやとりと考えてよろしいでしょう。

取り方 (動画・音声):院内課外活動教材ライブラリー

Ys 2008/11/24

取り方: はたおり

「二本ぼうき」

日本ほか

さいとうたま あやとりコレクション》 片手の「ほうき」からの連想で、この呼び名が広く知られている。片手の「ほうき」を「松」と呼ぶ地方では、このパターンは「二本松、両手松」などと呼ばれる。

パターン全体を一つの形に見立てる名称もあります:

取り方:『あやとりいととり 2』(pp.4-5 二ほんぼうき)

取り方: 二本ぼうき


このあやとりは日本だけでなく世界各地で伝承されていました。「四段ばしご」とは異なり、さまざまな取り方で作られています。手指だけでなく、口、足指を使ったり、人の手を借りて作ることもあります。北欧のサーミ人や、中国雲南省、インドでは、このあやとりの完成形をもう一人が取り上げ、また同じ形を作る;それを延々とくり返す手法も伝承していました。呼び名もさまざまですが、鳥の脚に見立てたものが最も多いようです。

アフリカ~

ヨーロッパ~

アジア~

北アメリカ~

南アメリカ~

オセアニア~

出典文献の詳細は こちら

ところで、この完成形の糸の走り方は左図上のようになっており、下の形とは全く異なるあやとりと見なされます (写真では見分けのつかないことがあります)。下記の「あやとり数学入門書 (英文)」では、この “鳥の脚” パターンの他、「はしご」、「ギリシアの吊り包帯」、「二匹のクマ」と、それぞれの関連あやとりや「トリック」を楽しみながら、あやとりを数学的に扱う基礎知識を身につけることができます。

Storer, T. (1988) "String Figures" Bulletin of String Figures Association 16 : pp.1-410 (supplement in two volumes)
Ys 2009/11/17

「あみ」

日本ほか

さいとうたま あやとりコレクション

「この形は大変に多くの名前を持っている。二人アヤトリで現れる型のうち、私の手元に集まったのでは一番の名前持ちである。「網」の名前は、特に関東から北にかけて多いように思う。東北などはほとんど一辺倒だ。後にいう「菱」の名も年寄りの人からは耳にしたものの、他はみなみな「網」であった。」 (斎藤たま『あやとり』(1999) [未発表稿])


この形のあやとりは世界各地にもあります。

[呼び名データ 準備中]

Ys 2011/04/07

「2本のブーメラン」

オーストラリア

アボリジニの発明品として有名なブーメラン。パターン中央の2本の糸の絡みとその両側からV字状に上に延びる部分が一本のブーメラン、同じ絡みと逆V字状に下へ走る部分がもう一本のブーメランを表しています。アーネムランドのイッルカラ・アボリジニ (the Yirrkala) から収集されました。

取り方は "String Figure Magazine" Volume 4, number 2 (June 1999) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

初出 McCarthy, F.D. (1960) "The String Figures of Yirrkalla" In: The American-Australian Expedition to Arnhem Land, (Ed. C.P. Mountford), Vol. 2:415-511.
Ys 2003/04/12

「マット」

ナウル

初出 (完成形のみ): Jayne, C.F. (1906) String Figures, published by Charles Scribner's Sons, New York. [reprint: (1962) String figures and how to make them. New York: Dover. (407 pages)]
初出 Maude, H.C. (1971) "The String Figures of Nauru Island" Libraries Board of South Australia Occasional Papers in Asian & Pacific Studies 2. (155 pages)
Maude, H.C., with members of the ISFA (2001) The String Figures of Nauru Island. 2nd Edition, revised and expanded. University of the South Pacific Centre at Nauru, and Institute of Pacific Studies, Suva, Fiji. (200 pages)
Ys 2004/06/05

「天秤棒」「物差し」

日本

伝承あやとり「箱枕/盃 — エプロン — 電球」の最後の形。

Ys 2003/10/04

「ジッパー」

by Grace Singer

もう一人が、上部の三角スペースに指を入れ、下に引くとジッパーが開く。何度でも上げ下げできる簡単で楽しいあやとり。在カリフォルニアの女の子 (11才) の作。

取り方は "String Figure Magazine" Volume 4, number 4 (December 1999) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

Ys 2003/11/01

取り方: ジッパー

「長老の椅子」

by Hen Lung Yu

長老の席にふさわしい、どっしりとした感じの椅子。両親指の輪の上に垂れかかる糸が、大きなクッションの柔らかい曲線を表している。作者の住む中国ではよく知られた、伝統的なタイプの椅子なのでしょう。

取り方は "String Figure Magazine" Volume 7, number 2 (June 2002) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

Ys 2003/11/22

「テントの幕」

ヘカレーヤアパッチ

「敷物・毛布」

ナバホ

このあやとりは1904年のセントルイス万国博覧会で採集されました。世界のあやとり研究のパイオニア、ケンブリッジ大学の A.C.ハッドンの勧めで、世界各地の先住民が ‘参加’ している会場を訪れた C.F.ジェーンが、ニューメキシコ州から来ていたネイティブアメリカンのヘカレーヤアパッチ (the Jicarilla Apache) の少女レナから習いました。ジェーンはこのパターンの名前を尋ねましたが、英語をほんの少ししか話せないレナは入り口の方へ行ってドアを軽く叩きました。ジェーンはそれを見て、そのまま「アパッチ・ドアー」と名付け、1906年に刊行した世界初のあやとり専門書に収録。日本のあやとり本でも、意味不明のその呼び名のまま紹介されました。ほんとうの名称、レナが言いたかったのは “ティーピィーの出入り口に掛けられた幕” のことでした。「ティーピィー」とは、ヘカレーヤアパッチの人々の伝統的な住居である大きな円錐状のテントのことです。ジェーンは同じ会場で、もう一人のヘカレーヤアパッチの女性から、その「ティーピィー」のあやとりも習っています → 「ティーピィー」。

この「テントの幕」とまったく同じあやとりは、ネイティブアメリカン・ナバホの人々が今日まで伝えており、「ラグ (敷物)、ブランケット (毛布)」と呼んでいます。

初出 Jayne, C.F. (1962) String figures and how to make them.. New York: Dover. (407 pages) - A reprint of the 1906 edition entitled String Figures, published by Charles Scribner's Sons, New York.

取り方:Wirt, W., Sherman, M., and Mitchell, M. (2000) "String Games of the Navajo." BISFA 7 : pp.119-214.

取り方のビデオクリップ:「ナバホあやとり」のウェブ・サイト Dine Education Web → Activities → Navajo String Games → Text of Introduction with Footnotes → FOOTNOTES: 6. RUG. ナビゲーションは変更されています (cf. トピックス 030)

取り方 (動画・音声):院内課外活動教材ライブラリー

Ys 2007/06/16

取り方: テントの幕

「魚を捕る罠」

ガイアナ

南米ガイアナのあやとり。魚を捕獲するために、川に仕掛ける罠。

取り方: "String Figure Magazine" Volume 3, number 4 (December 2002) にあります。そこでは「メガホン」という新しい名称が提案されています。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

初出 Lutz, F.E. (1912) "String Figures from the Patomana Indians of British Guiana" Anthropological Papers of the American Museum of Natural History 12(1):1-14.
Ys 2008/11/24